株式会社ニシカワ

【ニシカワグループ 代表 西川誠一×日本アグフア・ゲバルト 岡本勝弘 特別対談】

アポジークラウド IoT化へ有力な選択肢

日本印刷新聞 2016年5月23日号掲載

オフセット印刷をするための必需品である刷版。これをCTPから出力するためにはRIPサーバーがなければならない。このRIPサーバーは、OSがバージョンアップされるたびに更新のための投資を要し、しかも維持のために光熱費やメンテナンスの手間をかけ、さらには停電や災害などのリスクを抱えながら運用しなければならず、印刷会社にとってはとても大きな負担となるものだ。

そこで日本アグフア・ゲバルト㈱では、印刷会社をこのような多大な負担から解放すべく、ワークフローRIPをクラウド化した「アポジークラウド」の提供を開始した。

このシステムの第1号機を今年6月から導入するニシカワグループの西川誠一代表を招き、日本アグフア・ゲバルト、マーケティング本部の岡本勝弘本部長と意見交換をした。

 

 

印刷会社の負担を解放

岡本 まず、ニシカワグループについて簡単にご紹介をお願いいたします。

 

西川 現在、66期を迎える企業グループで、私は平成13年に社長に就任しました。

経営ビジョンとして「印刷業から情報加工業への転換」を掲げ、核となる印刷事業は大事にしながらも、印刷事業一辺倒ではなく業際を拡げることを志向し、情報加工サービス業という新しいカテゴリーの確立を目指してやってきております。

当グループの売上の約8割は印刷物によるものです。新カテゴリーだけでなく、従来からの印刷事業の強化にも努めており、A列のオフ輪や後加工設備の導入、新工場の建設など、大きな設備投資をしながら新しい挑戦をしております。
 従来型のビジネス以外の主な事業としましては、印刷分野においてはデジタル印刷/バリアブル印刷への対応はもちろん、3Dプリンターを駆使した新サービスをしております。

また、印刷と親和性の高いWeb関連のビジネスも展開しており、地域のコミュニティサイトの制作・運営や、フリーペーパーのような自社媒体をWeb上で運営するなどして、地域とのコミュニケーション作りをしている最中です。

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岡本 御社はプリプレスPDFワークフローシステム「アポジー」の国内第1号ユーザーとして、先進技術を真っ先に採り入れています。

その当時、プリプレスワークフローに抱えていた課題にはどのようなことがありましたか。

 

西川 当時のITや通信環境の中にあっては、特にプリプレスワークフロー自体に課題はありませんでした。 

当グループは、制作の拠点と印刷・生産の拠点、そして営業の拠点が別々の場所に分散しています。

その拠点間を人が移動してやり取りを行うことが当たり前の時代だったからです。

そんな折、圧倒的にデータが軽いPDFをベースとしたワークフローシステムが開発されたと知り、これを上手く活用できれば距離的、時間的な課題を解消できると思いました。

その当時、PDFを活用したワークフローシステムは「アポジー」だけでしたし、近い将来、絶対にPDFベースのワークフローシステムがデファクト・スタンダードになると思ったのが「アポジー」を導入した一番の理由です。
その後、通信環境もPDFの使い勝手も良くなり、いち早く「アポジー」を導入したおかげで、ワークフローの円滑化という波に乗ることができました。

 

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多能工化のきっかけ 原稿データを一元管理

岡本 西川社長からは以前、PDFワークフローシステム「アポジー」の導入は「必然」だったと評して頂きました。

そして今回、「アポジークラウド」の採用についても「必然」だとおっしゃっていましたが、どのあたりにメリットを感じられましたか。

 

西川 世の中ではクラウド技術が当然のように活用されていますが、印刷業界でクラウドを活用したソリューションができるのはまだまだ先のことだと思っていました。

それが、「アポジークラウド」というわかりやすい名称で、従来自社内にサーバーを仕立てて運用してきた機能がクラウドで実現できることを知り、これを試さない理由はない、と直感しました。まさに「必然」的にテスト運用を承諾することとなりました。

 

岡本 我々が「アポジークラウド」を開発する上でのポイントは、現状の運用環境とまったく変わり(=デメリット)がなく、その上でRIPサーバーの管理やメンテナンス、定期的な更新による投資コストなどをなくすことです。

また、既存機能の製品が少し向上しただけでは、大きな変革はなかなか起こせません。

本当にユーザーである印刷会社様にとって変革につながることは何かを考え、ワークフローRIPをクラウド化することこそが、ユーザー様の変革のサポートにつながり大きなメリットがでると考えたのが開発の経緯です。

 

西川 正直な話、今回もワークフロー自体に課題を抱えているという認識はありませんでした。それは、これまでクラウド技術を活用したRIPなどというものが存在しなかったからです。

従いまして、現状のRIPサーバーの管理・メンテナンス、定期的な更新による投資コストなどが無駄だという考えはまったくありませんでした。
この新しい技術の出現により、これまでは普通だと思っていたやり方に、大きな無駄ができてしまうことがわかりました。

専用サーバーを購入することなく機能拡張ができ、定期的なハード更新のための投資コスト、設置スペース、光熱費、人件費、バックアップやセキュリティ体制構築などの管理コスト削減が可能なほか、停電などのリスクからも解放されます。

また、情報セキュリティに過度の投資をしなくても良くなりますし、万一災害などが起き、社屋が損壊してもお客さまのデータは安全に残すことができます。事業の継続性を考えるとこれはとても大事なことです。
日本アグフア・ゲバルトさんからの提案があったおかげで、いち早くクラウド技術を採用できたことは大きな価値となります。当社に技術革新をもたらしてくれたおかげで、新たな視点が生まれて、無駄や改善・変革の要素を発見できました。

 

岡本 御社では、ニシカワの本社(東京都東大和市)、ニシカワ印刷の笹井工場(埼玉県狭山市)と日高工場(埼玉県日高市)と、RIPサーバーを3拠点それぞれに設置する形で運営されていらっしゃいました。

そして扱う原稿データは、それぞれの拠点にあるサーバー内に保管していました。これがクラウド技術を利用することで、一元管理することができるようになります。その点について印象をお聞かせ下さい。

 

西川 昨年5月から「アポジークラウド」のテスト運用を開始しました。やはりテストを始めた当初は、これまでと同じ処理スピードで円滑に仕事を流していけるのか、という不安や疑問がありました。ただ、実際に始めてみると実務上はまったく問題が起こりませんでした。データによっては多少の早い/遅いということがあるのかもしれませんが、全体的にはこれまでのRIPサーバーと処理スピードは変わらないという結果になりました。

 

岡本 「アポジークラウド」のテストにご協力をして頂きましてありがとうございました。

当社としてももっとも確認しなければならない点は、処理スピードでした。
サーバーからクラウドへRIPを移行したことで、これまではできていたことができなくなってしまうのでは、我々が「アポジークラウド」をご提供する意義や効果が薄れてしまいます。

クラウドへ移行しても、これまでと同じように運用できるということを、「アポジークラウド」を開発する上での最低条件としていましたので、このテスト結果をお聞きし、我々も自信を得られました。

 

西川 問題なく仕事が流れることを確認できましたので、今年6月から正式に「アポジークラウド」を採用することに決めました。

また、「アポジークラウド」を使ってみて、ただ単にワークフローRIPがクラウドに変わってサーバーがなくなるだけではなく、人員配置・役割の見直しや工場の合理化案などが現場から上がってきました。
高い品質、確実な納期体制、低コストへの取り組みが当たり前となり、ますます差別化が難しくなる中、工場現場側としては、省力化・合理化を突き詰めていくことしか努力や進化ができるポイントがなくなってきています。

それが「アポジークラウド」を使うことで、専任体制を前提としたこれまでとは違ったアプローチで、多能工化への取り組みをしたいという意見が現場から生まれてきたのです。

一昔前までは、与えられた役割を淡々とこなしていけばいいという時代だったのかもしれませんが、これからはいろいろな役割が担えるようになり、スキル・価値をあげることで評価・賃金を上げるという時代となっています。

今回、このような意見が上がってきたことはとても喜ばしいことです。「アポジークラウド」だけがその要因だったかどうかはわかりませんが、1つの大きなきっかけであったことは間違いありません。

刷版出力無人化をめざす

岡本 「アポジークラウド」を活用することで、どのように人員配置・役割が変わり、多能工化へ結びつくのでしょうか。

 

西川 「アポジークラウド」の導入によって目指す一番大きな変化は、刷版出力の無人化です。
現在、CTPは笹井工場と日高工場の2ヶ所に設置しています。そこには、刷版課という刷版出力部門がそれぞれあり、また生産計画部門も両工場にありました。

これをまず、生産計画部門については笹井工場に統合し、日高工場の出力についても笹井工場から操作することにしました。
そして、刷版出力部門を生産計画部門に統合し、刷版課という部署をなくします。これが可能となったのは、当社が、現像レスCTPプレート「アズーラ」を採用していることも大きな要因です。

このCTPプレートは現像レスタイプですので、自動現像機および現像液の管理が不要となります。「アポジークラウド」によって出力指示まで生産管理部門で行えば、刷版出力工程において人手が必要となる要素は、プレートの補給だけです。

それだけのことならば専門の部署は要りません。また、生産工場は24時間稼動しているにもかかわらず、生産計画部は昼勤のみで、夜勤対応をしておりませんでした。

これまでは、夜間の入稿の受け口や進行は刷版出力をしていた刷版課のスタッフが行っていました。

今後は生産計画部が24時間体制に移行できますので、営業スタッフにとりましても良い効果が波及します。
さらに今後は、刷版出力部門が行っていたRIPや面付け作業については、「アポジークラウド」を活用しもっとフロント側で担当するようにしたいと考えています。自社で作った原稿データについては、面付けおよびRIP処理までして、刷版出力まで持っていける体制を作っていこうと思っています。

 

岡本 それぞれの拠点でRIPしていたものを、「アポジークラウド」を使ってニシカワの本社にいるクリエイティブ部門のスタッフがRIPをすることで、データの一元管理もしながら、各工場へ面付けされたデータを送っていくという流れにするのですね。

 

西川 処理スピードの確認ができましたので、印刷機の割り振りに変更が起こらないギリギリの段階で、データを送信するというフローにしようと思っています。

各拠点が離れているという立地上のマイナス面があったからこそ、このような先進的な取り組みや多能工化ができ、プラスαの効果を生むことができると期待しています。

 

岡本 製造業における無人化は、無駄やムラが省けるので取り組むべき重要な課題だと思われます。それについての取り組みや考え方についてお聞かせ下さい。

 

西川 世の中ではインダストリー4.0やIoTに注目が集まっています。我々には関係ない話のようにも聞こえますが、社会のあらゆる分野がこのテクノロジーによって変わっていく中、印刷会社だけが変わらないというわけにはいきません。

日本の生産年齢人口は年々減っていきますので、その環境下でも企業を成長させるためには従業員1人当りの付加価値額を上げてゆかねばなりません。

そのためにはIoTといった新しい技術や考え方は必要不可欠だと思います。今般の「クラウド化」というのは、印刷会社ができるIoT化の有力な選択肢の1つになるでしょう。

 

岡本 「アポジークラウド」を活用することによって業務の統合化や多能工化が図れ、結果として1人当たりの生産性が上がります。

「アポジークラウド」では、今後もさまざまな自動化を進めていきますので、業界独自の特殊なスキルが要らなくなっていくという傾向に間違いはありません。
当社の展望としましては、セキュリティや一元管理といった点を含め、さらに「アポジークラウド」のレベルアップやオートメーション化を図っていきます。

まずは、従量制のような料金体系にして繁忙期や閑散期に合わせて使用するディスクの容量を臨機応変に対応できるようにすること、さらには外注パートナー会社と付き合う中でRIPをパートナー会社でも共有できるようにすることも考えております。 

drupa2016では、アポジークラウドを取り巻く新しい製品も発表されますので、そちらにもご期待下さい。