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大和出版印刷株式会社

高精密印刷で高級志向の市場へ進出《後編》

 

日本印刷新聞 2009 年8月29 日号掲載

 

■ 「強いこだわり」に焦点確かな技術と製品力発揮

 

 大和出版印刷㈱は、XMスクリーニング「スブリマ」ユーザーがその印刷品質や技術を競う、スブリマ印刷コンテスト(日本アグフア・ゲバルト㈱主催)において、直近の3年連続で金賞を獲得するなど、その能力を磨き続けている。この確かな技術と製品力を発揮するには、そのような仕事を掴む営業活動が必須だ。



 

武部健也社長

武部健也社長

 
 今まで高級印刷の営業をしてこなかったので、営業活動は新規開拓になる。何の当てもターゲット設定も無く、営業スタッフの勘と根性だけを頼りに無鉄砲な営業をさせても、効率が悪く、士気にも悪影響を与えることから、同社ではターゲットを絞って営業。そのターゲットとして「強いこだわりを持つ人」に焦点を当てた。例えば、画廊もしくは絵を描いて個展を開いている個人、こだわりを持ったコレクターが存在するような分野のショップ、シズル感の表現を求める飲食店や食品分野などだ。このターゲット選定には、ある分野に強いこだわりがある人にはそれを表現する印刷技術のこだわりや価値を理解してもらえる、という読みがあった。「新たな印刷会社の営業マンが訪問すると、すぐに価格の話になってしまう。そうならないために、普段、目にしている印刷物とは違うレベルのものが、これまでと同じ価格でできるということをアピールした。当社の顧客が儲けてもらうために、当社の高級印刷が顧客の差別化になると訴えている」と、営業スタンスを武部社長は説明した。
   

万年筆向け用紙の開発・販売も

 ターゲットを絞って営業スタッフが訪問するのも重要な手法の1つだが、会社として営業活動をサポートすることも怠ってはいない。その取り組みの中で大きな成果をあげているのが、同社が自社開発した、万年筆用の紙「Liscio-1」の販売だ。
紙の開発・販売という、印刷会社にとって畑違いの仕事は、先に紹介したターゲットの1つで、こだわりを持ったコレクターが多くいる万年筆ショップとの取引がきっかけ。多くの万年筆コレクターに向けて、革鞄店が高級万年筆ケースを作り、同社で万年筆用のノートを作るという共同企画の話が持ち上がった。そこで、万年筆愛好家を集めて紙の書き味のアンケートをした結果、「バガスP-70」という銘柄の紙が、万年筆で書くのに最も良いという反応があったので、その紙を使ってノートを作ったところ、5250円という高額商品にも関わらず、わずか2ヶ月で用意した全てが売り切れた。そこで追加製造しようとしたところ、同銘柄が生産中止になっていたので、自社で紙を作ることを決断。小ロットで特殊な紙を抄造できる特種製紙㈱の協力を仰ぎ、筆記時のペン先が滑らかで、裏抜けやインク滲みがしにくい、万年筆用の紙「Liscio-1」を、今年2月に13㌧作った。

 

 「Liscio-1」で作った紙製品の一部

「Liscio-1」で作った紙製品の一部

 この紙を使った各種製品が売れていく過程で、強いこだわりを持つ人に同社の存在と高級印刷の能力が浸透していき、見込み顧客発掘に役立った。さらに、これまで同社と全く縁がなかった大手企業から、この「Liscio-1」をきっかけにホームページ経由で問い合わせが来た例もあるという。「万年筆用の紙製品を作っている印刷会社があるということが口コミで広がり、それが高級印刷市場を掴む1つのきっかけとなっている。もちろん“Liscio-1”は、採算が取れる価格設定にしてあるが、もし仮に売れなかったとしても、この紙がきっかけの印刷受注があったので、損にはならなかっただろう」と武部社長は、用紙製造と高級印刷市場開拓が相関関係にあることを語る。
 営業サポートの一環として、今年7月に開催された東京国際ブックフェアにも出展した。そこでは、「スブリマ」による高級印刷、「アズーラ」による環境配慮型印刷、そしてユニバーサルデザインという印刷分野での3つの引き出し、そして万年筆用の紙「Liscio-1」を紹介した。しかし、同社が紹介した事業はそれだけにとどまらない。同社では2人のシステムエンジニアを採用し、デジタルシステムの設計・構築もしているのだ。 

 

印刷もできる情報加工処理会社に

 これは同社が、単なる印刷会社ではなく、印刷をすることもできる会社を目指していることにある。「当社にデータを渡すと、データベースを構築して整理するだけの仕事、それをWebなどのメディアに転用する仕事、当然それを印刷できる、というような印刷もできる情報加工処理会社になろうと思った。そのためには、組版やWebサイト構築技術も必要だが、それをつなぐプログラムやちょっとした改良ができるシステムエンジニアが必要だった」と武部社長は語る。現在は、データベースと連携した自動組版システムを自社開発しており、複雑な処理を要する名簿の仕事などで、インデザイン上では組版作業をせずに、データを流し込むだけの簡素化を図っている。また、この自動組版システムを使った、データベース処理の下請け業務も展開している。

   

 さらに、同社の関連会社である㈱dignetが3年前、中国・大連にDTP業務を行う現地法人を設立した。それにより大連の事務所との間でファイル転送をするが、FTPサーバーを介したやりとりを煩雑に感じていた。そこで社内で使いやすいように、ファイル転送サービスに進捗管理機能を付けたシステムを、同社のシステムエンジニアが開発。そのシステムを、同じように大連に現地法人を構えている同業者に披露したところ、システムを売って欲しいと言われたことを端緒に、この入稿/校正授受支援システムを「d-proof」という名称で提供している。
 このような新分野への進出は、簡単か難しいかもわからず、また投資額の想像もしにくいので、保守的な経営者は二の足を踏んでしまうものだ。その点について武部社長は、「リスクが大きくないと思ったことは、すぐに取り掛かる。会社規模が大きくないからこそ、俊敏に旬の技術へ進出できるからだ。“スブリマ”や“アズーラ”の導入は、仕事の幅が大きく広がるというメリットに対して、負担はほとんどなかった。中国・大連に作った会社は、資本金+家賃や人件費等の支払い分だけの投資なので、それに見合う量の仕事を作れれば問題はないし、最悪でも資本金だけの損失で済む。“Liscio-1”の製造も調査をしたらそれほどの多額を要さなかったし、システムエンジニアの採用も人件費と数十万円程度のハイスペックなPCだけの投資なので、事業伸展の可能性と秤にかけるとすぐに答えは出た。このようにして蒔いた新事業の種を、これから花が咲くように育てていく」と、新市場進出を決断した背景と、同社の次なる一手について明かした。 

 
 
 
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