惠友印刷株式会社

:Apogee 7活用で「攻め」の経営へ転換する- 生産の省人化を実現

 

2012.2 月刊印刷情報掲載

 

惠友印刷株式会社(萬上圭輔社長,本社・東京都板橋区大原町)はアグフアのハイエンドプリプレスワークフロー「:Apogee7」を導入し,様々なメリットを生み出している。これを活かしてより競争力の高い企業体質を獲得した。あわせて採用した現像レスサーマルCTPプレート「:Azura TS」四六全判CTPセッター「:Avalon N8」と合わせ,現在の運用状況を萬上孝平取締役社長室長,大島勝範取締役 板橋工場長/プリプレス部長に聞いた。

 

 

 

 

萬上室長(左)と大島工場長

萬上室長(左)と大島工場長

 

■ 高付加価値化への挑戦

 同社は,1995年に東京・飯田橋で創業し,以来,一貫して大判の頁物印刷を中心に事業展開してきた。近年は,菊半裁・菊全判4色機の導入を契機にカラーマネジメントを強化し,一般商業印刷やデザイン事業へ進出している。

 昨年4月にプリプレスとCTP部門の生産力の増強および環境保全などを推進するため,ハイエンドプリ高付加価値化への挑戦プレスワークフロー「:Apogee7」を導入。あわせて現像レスサーマルCTPプレート「:Azura TS」四六全判CTPセッター「:Avalon N8」を採用した。

 同社は2002年に他メーカー製の四六全判サーマルCTPセッターとRIPシステムを主力の板橋工場に導入し,運用を続けていた。しかし周辺システムや個別機器の増設などにより,結果として工程や担当者・ユニットごとでの個別の最適化が進み,CTPワークフローのオペレーションのベストプラクティスや全体最適化,あるいはリスク・マネジメントの観点は徐々に損なわれていった。

 データ入稿の需要は年々,拡大し既設の出力機の生産能力はバージョンアップやメンテナンスにも関わらず相対的に落ち込み,より大規模な機器増設を含むシステム変更に向け見直しを進めてきた。既存業務の省力化,効率化や環境保護の推進から,より競争力を高めるための高付加価値印刷への挑戦による「攻めの経営」への転換がワークフロー導入の大きな目的だった。

 この動きを萬上室長はこう説明する。「従来は,既存の面付けソフトをRIPと別立てで使っていたが,扱えるDTPオペレーターは限られていた。一方で年々,データ入稿は増え,CTPのキャパシティーが見劣りしてきたため,見直しのタイミングを迎えていた。その時にアグフアから新バージョンとなる:Apogee7の提案を受けた。Windowsプラットフォームでもあり,操作性の良さも評価できた。またアグフアのユーザー企業へのヒアリングもかなり行った。都内1号機ということで,メーカーも力を入れてくれた。また:Azura TSは,現像レスで環境に優しい版だが,実際,廃液の量はかなり減り,現像タイプでなくとも業務効率は飛躍的に向上した」

   

膨大なテンプレートの管理が不要に

 同社は,既存の面付けソフト,他社のワークフローも活用しているが,これまでは面付け機能がワークフローから分離している形で作業してきた。データ入稿の増加により,オペレーターを増やす必要に迫られたが,そのためには難易度の高い面付けソフトでは,経験の浅いオペレータは馴染みにくいという問題に直面していた。面付けソフトの難易度によるハードルの高さから決まったオペレータしか扱えないという現実があった。さらに印刷機種の多彩なラインアップから大量の面付けテンプレート管理の課題が生じていた。

 同社は,8台20胴の印刷機を保有しており,判サイズは,四六全,菊全,菊半が揃っている。作業にあたって印刷する印刷機を決定し,版と用紙サイズを決める必要があった。当然,面付けテンプレートの数は膨大なものになる。「:Apogee7」のメリットのひとつは,この面付けテンプレートの管理が不要になることである。

 「:Apogee7は,Apogee Imposeとして面付けソフトを内蔵している。一貫して制作体系の中に入っているので使い勝手がよい。当社は複数メーカー5社の印刷機を扱っており,それぞれサイズの異なる仕事をしているため,何百というテンプレートを管理する必要があった。ベテランのオペレーターはこうしたテンプレートの選択に慣れているが,新しい人達はなかなか入り込めない。Apogee Imposeはテンプレートではなく,その仕事の条件に合わせて面付けが自動作成されるフォーマットを内製化した唯一のソフトで,印刷機や用紙の条件を指定するだけで,あらかじめ設定してしておいたルールにもとづいて最適な面付けを生成する。これを使うことで新しい世代のオペレータにとって良い効果が出ている」(大島工場長)。

 
「多能工化」を実現するワークフロー


 ワークフロー内蔵のソフトを多人数で使うことで,コストダウンにも結びついているという。さらに従来,他の工程を担当していた社員が面付けのオペレーションにあたることも可能になった。各DTPオペレーターが,CTP出力直前までの工程を担う形ができている。

 アナログの刷版工も自分の担当している仕事が空いている時に,できるだけデジタル関係の仕事に関わることで,社内に「多能工」を育てていく同社の方針が,このワークフローで実現に向かっている。アナログ関連の仕事を扱う部門が閑職化したり,場合によっては不採算になる現実の中で,デジタルに軸足を置いた多能工化は不可欠になる。

 作業現場の「多能工化」が進んでいる

作業現場の「多能工化」が進んでいる

 アナログの仕事で知識と経験を積んできた社員にとってデジタルによる面付けオペレーションは:Apogee7が突破口となり,取り組みやすくなっている。こうした人員の配置は短納期対応にも重要な要因となっている。このように,人的メリット,投資メリットの両面で効果が出ている。

 さらに各種印刷機を直前に入れ替えて印刷することの多い同社では,印刷機変更があっても,校了ページを再RIPすることなく面付けだけ自在に変更することができる。面付けが済んだジョブには,印刷機や用紙の条件を変更することで,自動で再面付けができるのである。これで刷版供給をスムーズにし,印刷機を効率的に稼働させていくことが可能になる。

 

オプション対応にも注力

 「:Apogee7ではサイズの異なるものを自動的に付け合わせ面付けする作業が楽にできる。当社ではこうした仕事が多く,これは非常に優れた機能だと思う。しかも画面上で視覚的に容易にできる」(大島工場長)。この点も評価ポイントとして高いという。

新しいワークフローによって,省人化が進んだが,特に顕著な効果は無駄な残業や版待ち時間が激減したことである。原材料調達やシステムと人材の効率的な運用の相乗効果で,経営的にも改善効果が出てきた。

 リピートの仕事は,再版精度の問題もあり,他社のワークフローで処理するケースが多いが,最終的には:Apogee7への統合へ向けて体制を整備していく。仲間仕事では,他社のワークフローとの互換性から,やはり他メーカーのワークフローを使うケースも多いが将来的には一元化の方向へ進むという。

 大島工場長は,アグフアの開発力を高く評価している。同社からの要望が現実のスペックとして反映されるスピードが速いというのだ。ワークフローの心臓部であるAPPE2.5の搭載も早い時期に行っていた。さらに同社特有のニーズに応えるオプション機能の追加に対しても,柔軟に対応してもらっている。

 「当社の特殊事情ですが同じ印刷機に,PS版とシルバーマスター版をかけているので,そのために他社にはないセンターピンという形でパンチ穴を付けている。これは独自にオプション化してもらい,人手で行うより精度が高く,見当精度を含め効果が出ている」(大島工場長)。

 

 廃液コスト削減と能率向上へ

 

 四六全判CTPセッター「:Avalon N8」は,これまでネックになっていたプレートの給版カセットの入れ替えが不要ですむ,5段カセットを備えている。以前は2段カセットのシステムだったので,これで作業効率が大きく向上した。社内に判サイズが異なる印刷機が複数あるため,従来はカセット入れ替えに手間がかかっていたのが解消された効果が大きいという。この部分で大きく生産性が向上した。

 以前は,必要なプレートの数を確認して,カセットをセットし,次の仕事に備えてセット作業を繰り返していた。作業者として1.5人を配置する必要があったが,現在は1人になり,さらに別な仕事もできる余裕も出ている。

またガム液による印刷品質への影響は見られないという。さらに廃液がなくなったことで,廃液処理コストは低減した。作業者は頻繁に廃液を交換する作業がなくなり人的コストの面でも貢献している。さらに今後は,クリオネマークのゴールド規準取得を視野に環境保護体制を整備していく。

 

 

 :Avalon N 8 の活用で作業能率を高める

:Avalon N 8 の活用で作業能率を高める

 

 ワークフローの活用で印刷機を効率的に回す

 ワークフローの活用で印刷機を効率的に回す

 自社開発のMISを構築

 同社は基幹システムとしてMISを社内で独自に開発・運用しており,販売管理や予定管理,個別案件の原価管理などのモジュールが盛り込まれ,社内の情報共有を進めている。自社の基幹業務に関わる情報を収集し,経営判断に役立てていこうという発想だ。

 バージョンアップを重ねながらすでに10年以上の運用実績があり,自社の業務に最適化したシステムとして確立している。その基幹システムを今夏,リニューアルする構想があるという。

 この基幹業務システムはワークフローそのもので,ITプラットフォームの刷新とともに業務プロセスの最適化を目指し再設計を進めている。印刷ジョブレベルの入出稿や印刷進捗状況など一連の製造プロセスの詳細な管理はもとより,機械のメンテナンス計画や諸材料の調達計画,案件や工程ごとの利益管理など,現場から経営層まで,それぞれの立場での的確な判断に資する様々な情報が,リアルタイムで可視化される。前職で世界最高のERP(統合基幹業務システム)を学び,この開発プロジェクトを率いているが,強力なワークフローと情報基盤を構築できると思う」(萬上室長)。同社では,こうしたシステムの開発を通じて拡印刷を志向し,ソリューションプロバイダーへの体質転換を試みているのである。

 

 電子メディアへの取り組みも進めている。電子書籍・電子カタログを積極的に提案し,組版からの受託も狙っている。本格的なワンソース・マルチパブリッシング時代に対応するため,上流工程を強化する方針だ。

またワークフローにクラウドによる顧客との接点をどのような形で組み込むか。「オンライン入稿の態勢はすでに整備しており,利用されるお客様は増えている。さらに踏み込んで,お客様にとって最良のフロントエンド・ソリューションは何か,そこを突き詰めていきたい。校正は安定してできるかどうかが鍵になる。紙の校正に拘るお客様もいるので,まずPDF校正を受け入れて頂くところから強化していきたい」と大島工場長は言う。

 

■ 大サイズのモニター校正

 :Apogee7には1ビットの最終データのビューアーが標準搭載されており,同社は社内で大画面モニター校正を実現している。60インチのモニター(シャープ製)で,最終出力データをほぼ実寸でモニター表示しチェックするものだ。これは当初,予想していたより大きな効果をあげているという。

 出力紙上での確認は時間もコストもかかるため,仕事に応じて印刷前の最終チェックに活用している。色のチェック,仕上がり・断ち落としの確認が一目瞭然で行える。版の大きさ,絵柄の仕上がり,透明化での表裏の絵柄確認ができるため,印刷時の調整にも役立つ。局所的な拡大も容易なため,体裁をはっきり確認できる。現在はCTP部門に設置されているが,印刷側で面付け状態の絵柄を確認できるメリットを考慮し,印刷現場の活用を検討しているという。現在は:Apogee7で処理したものは,モニタープルーフにかけているが,利便性が評価されれば今後,印刷業界で広く使われる可能性がある。

 大サイズモニターで最終出力データをチェック

大サイズモニターで最終出力データをチェック

 

カラー化対応に力を入れる

 さらにワークフローの整備に合わせて,カラー印刷への対応力を高める努力を続けている。昨年はDDCPのアップグレードや,カラーマネジメントソフトの充実とそれに合わせた出力環境の整備を進めてきた。ユニバーサル・デザインへの対応も含め,カラー印刷に強みを打ち出すことで,新規顧客の開拓にも幅が出てくる。

 「設備だけに頼らず,お客様にとって必要なものは何か。どうすれば喜んで頂けるのか。これを基本に仕事に取り組んでいく」と大島工場長は言う。これが惠友印刷の基本姿勢なのだ。

 
 
 
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