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株式会社アルキャスト

特殊紙を「アズーラ+速乾印刷」CTPと印刷機を併設

印刷ジャーナル 2021年5月25日号掲載


「持続可能な印刷の新しいカタチを創造する」─信州・長野に本社を置く(株)アルキャスト(長野市中御所4−3−13、東佑美社長)は、アグフアの現像レスプレート「アズーラ」を全面採用し、水を究極まで絞る「速乾印刷」を確立。同社が得意とする特殊紙への印刷において品質・納期・コストの面で高いパフォーマンスを発揮するとともに、パウダー使用量の削減によってCTPと印刷機を併設。印刷経営において大きな業務改善効果を弾き出している。

SDGs経営を実践

 同社は、学習参考書を中心とした出版物やパンフレット、チラシなどの商業物印刷を手掛ける新鋭のオフセット印刷会社。上製本、並製本、中綴じ本など、多種多様な出版物の印刷に携わっている。印刷ビジネスにおける「地域貢献」と「環境対応」を経営の旗印に掲げ、企業等が経営戦略としてSDGsを活用することを県が支援する「長野県SDGs推進企業登録制度」の第1期から登録認定されるなど、積極的なSDGs経営の実践でも知られる。

 「地域貢献」では、例えば長野県下伊那、飯田地方の伝統工芸である「飯田水引」(和紙をこより状にした紙ひもに、水に溶かした米糊を塗りつけて乾燥させて着色したもの)で綴じたオリジナルノートを企画制作。今年4月から長野市内の中学校でこのノートが採用され、生徒に配布されている。

 一方、「環境対応」では、環境に優しい生産活動に取り組む印刷業界のシンボル「クリオネマーク」の使用認定ステータス基準をクリアし、竹を原料とした「竹紙」や石灰石を原料とした「ストーンペーパー」、伝統工芸品である「和紙」など、非木材紙への印刷を積極的に手掛け、環境への貢献に取り組んでいる。とくに「竹紙」は、放置された竹林が里山の雑木林などを侵食して生態系に影響を及ぼす「竹害(ちくがい)」に対して、竹林を間伐し、資源として活用することが求められていることから期待されている印刷素材。国産の竹を100%使用していることを証明する「竹紙認証マーク」もあり、印刷物に付与することができるという。

 同社の強みは、これら特殊紙に対する高い印刷技術とノウハウにある。社名「アルキャスト=ARScast」は、ラテン語の「ARS(技術)」と英語の「cast(配役)」を掛け合わせたもの。「印刷の技術者集団」標榜への思いがそのまま社名となっているわけだ。同社第一営業部の東靖大氏は、「『特殊紙への印刷』という当社の武器は、SDGsを軸とした『環境素材』の積極採用から生まれたもの。その結果が『印刷技術の向上』へと繋がっている」と説明する。

 この技術力が下支えする「企画商品開発力」というのも同社の成長エンジンとして機能している。そのひとつとして、新型コロナウイルス感染防止対策を目的とした「ワクチン手帳」を商品化し、販売している。これは、個人がワクチンの接種履歴を記載し、管理する手帳で、これもSDGs項目のひとつである「健康と福祉」に該当する取り組みである。同社ではさらに今年4月、抗菌製品技術協議会(SIAA)の認証を取得し、表紙に抗ウイルスニスを施した「万能ワクチン手帳」の商品化にも着手。「健康と福祉」に「安心」を付与した商品として売り出す考えだ。現在、「ワクチン手帳」は自治体やクリニックからの問い合わせも多く、個人ならば同社ホームページから購入することもできる。
ワクチン手帳

インキ2割減、パウダー3分の1減

 同社がアグフアの現像レスプレート「アズーラ」を採用したのは2013年。SDGs経営を実践する同社にとって、「版材の環境対応」という側面もあったが、最大の狙いは、やはり「速乾印刷」だった。フラットサブストレートと呼ばれる浅くて細かな砂目構造によって水とインキが絞れるアズーラの特性は、乾きにくいものが多い特殊紙を強みとする同社にとって非常に魅力的なものだった。同社管理部担当部長の阿部弘孝氏は、「当時、UVの普及期であったが、コスト要求がますます高まる中で、当社は『油性+速乾印刷』を選択した。アズーラは『難しいプロ仕様のプレート』と聞いていたことから、さらなる印刷技術向上へと繋がる期待もあった」と当時を振り返る。結果として、インキ使用量は、損紙減による効果も含めて2割程度の削減に、またパウダー使用量は3分の1程度の削減に繋がっており、コスト面でのメリットも享受している。

 そして同社は昨年、およそ8年間にわたる日々の運用の中で積み上げてきた技術と実績をもとに、さらなるアズーラ効果の追求に乗り出す。それまで二社購買だったプレートを「アズーラ全面採用」へと切り替え、同時にCTPセッターを更新。それを印刷機と併設したのである。これは印刷機のメンテナンススキル向上にともなうパウダー使用量の削減がもたらした新たな挑戦である。

 「以前、印刷機は1階、CTPは2階に設置していたが、プレートの運搬にともなう効率の悪さ、さらに運搬時に版キズが入って焼き直し、あるいはトラブルに繋がった事例もあった。当時は、印刷で使用するパウダーや紙粉がCTPのトラブルの原因になるという認識で、印刷機との隣接設置は無理なものと思い込んでいた。現在、プレートの運搬という距離的な非効率の解消による効果は期待以上。さらに印刷部と製版部の連携がスムーズになり、イレギュラーな事態が起こっても即対応できる柔軟な工程によって大きな業務改善に繋がっている」(阿部部長)

東氏(左)と阿部氏

目標は「脱炭素」

 水を極限まで絞ったアズーラ+速乾印刷は、特殊紙の印刷においても、安定した色再現を実現している。

 「水やインキの量が多いと特殊紙にクセがついてしまうことがある。その意味でも『アズーラ+速乾印刷』は特殊紙に適していると言える」と阿部部長。さらに、特殊紙を両面印刷する場合、以前は表面を刷った後、丸1日乾燥させることもあったという。いまでは、裏面の印刷準備の間に乾燥を終え、即印刷することがほとんどで、納期対応にも大きく貢献している。

 SDGsを軸に「環境負荷軽減印刷」を目指す同社。今後の目標は、環境省が打ち出す「脱炭素社会」への貢献だ。「印刷に付随するすべての工程において、素材・機械・材料を少しでも環境に優しいものへと置き換えていくことは、当社にとって永遠のテーマ。そのための『技術育成』が今後ますます重要になると考える。それを継続していくことでSDGsのゴールも見えてくると確信している」(東氏)

 SDGs経営を実践する同社にとってアズーラは、そのゴールへの道筋を指し示す羅針盤のような機能、効果をもたらしたように見える。加えて、乾きにくい特殊紙への適性を高めることで品質および納期にも貢献し、もちろんコスト削減効果も弾き出している。とくに印刷機とCTPの併設は印刷経営において大きな業務改善をもたらした。同社を担当するアグフアの神前裕樹執行役員は、「コロナ禍において、製造コストの問題によってUVから油性+速乾印刷への動きもある。しかし、印刷機とCTPの併設はアズーラを使ったからといってどの印刷会社でもすぐにできることではない。あくまでアルキャスト様の印刷機のメンテナンスとアズーラの特性がマッチしたから成された取り組みである」と語っている。

水とインキが絞れるアズーラ 印刷技術向上への期待も