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ダイコロ株式会社

環境負荷軽減と印刷品質の安定性を両立
今月号の表紙印刷でVOC排出を徹底削減

 

月刊 印刷界 2010年4月号掲載 

 

 今月号の表紙印刷を担当したダイコロ株式会社(本社・大阪府大阪市中央区大手前1ノ7ノ31、松本秀作社長)では、幼稚園から大学まで年間9600校・100万冊の卒業アルバムを制作し、若人達の想い出を編んでいる。オリジナリティ溢れる商品作りで卒業アルバムの全国シェア40%を占める同社では、未来を支える若人達の美しい想い出を彩なすにあたり、環境への優しさというメッセージも収めたアルバムを届けるべく、VOC排出を徹底的に削減した技術をもって印刷・製作している。枚葉オフセット印刷において、VOC排出や廃液で多くの環境負荷がかかるのが、刷版現像と湿し水だ。同社ではこの工程で、アグフア社製の現像レスCTPプレート「アズーラ」、そして日本平版機材㈱製の無薬品湿し水給水システム「てんとう虫801」を活用。印刷時の不安定要素も排除できるこれらの技術をベースに、高印刷品質・コスト削減・作業性などでのメリットを享受しつつ、環境配慮型印刷を展開している。
 同社では、2006年にISO14001の認証取得をはじめ、常に環境配慮において改善を図っている。その一例として、卒業アルバムの印刷用紙には無塩素漂白パルプ「エコパルプ」を使用、オフセット印刷部門では植物油インキを使用(UV印刷以外で)することでVOC規制を解決。さらに、現像レスCTPプレートの採用により、環境に配慮した制作工程へと全面的な改革を進めてきた。

 

■ 現像レスCTPプレート 「アズーラ」を導入

 

環境改善の第1ステップは2002年。刷版工程をフィルムから切り替えるため、アグフア社製のバイオレットCTP「ガリレオ」を導入し、2004年までに計4機配備した。その後、さらなる環境改善と経費節減を目指し、現像レスCTPプレート「アズーラ」を導入。それにともない、2006年から2007年にかけて、CTPもアグフア社製サーマルCTP「アバロンLF」(6機)に順次更新し、「アズーラ」による現像レス工程を確立させた。「アズーラ」導入にあたっては、他の様々な環境配慮型資機材ともあわせて検証した結果、目視で検版ができる「アズーラ」の作業性および品質が同社に最適であると判断した。また、アグフア社からの強力なサポート体制も導入の決め手となった。

末光部長

末光部長

 

 

■ 生産性20%アップ産廃委託費用は年間20分の1に

 

同社では「アズーラ」導入後、処理能力増により生産性が20%アップ。さらに、現像レスプレートに切り替えたことで、現像処理液(120L)が不要になり、ガム液(20L)だけで済むようになったことから、その運搬・交換・廃液処理の労力が半分以下に激減した。刷版課の堀稔部長代理は、「廃液処理では、産廃委託費用が年間20分の1にまで削減され、アズーラの採用が環境負荷の大幅改善につながった。今春には、出力速度が最大約50%も向上する高感度の新型現像レスプレート『アズーラTS』への移行を計画中だ。網点再現性の向上がテスト結果でも出ているので期待している」と話している。
 また、「ガリレオ」導入時から、中間部はAMスクリーニングで、ハイライト部とシャドウ部はFMスクリーニングの技術を応用する高精細XMスクリーニング「スブリマ」を活用している。「スブリマ」の採用は、同社の印刷品質向上の大きな要素の1つとして、技術力アップのきっかけになった。顧客からもその高いクオリティが好評で、プレートを「アズーラ」に変更した後も、「スブリマ」は変わらず運用している。

 「アバロンLF」が6機稼働している

「アバロンLF」が6機稼働している

 

 

■ 無薬品湿し水給水システム「てんとう虫801」を活用

 

現在、同社で稼動する印刷機のラインナップは、菊全判5色機が2台、菊全判4色機が3台、菊全判2色機が2台、菊全判UVコーター付5色機が1台(全てハイデルベルグ社製)の計8台31胴。そのうちの2台の印刷機を、無薬品湿し水給水システム「てんとう虫801」と接続している。
 この「てんとう虫801」は、光触媒水処理機構と磁気水質処理機構により基本構成される。その原理は、まずフィルターで油分を取り除いた湿し水を、磁場のある磁力発生装置に通すことによって水の分子を+-分子に整列させ、カルシウム・マグネシウムイオンを取り除き、チタンのフィルターが入っている光触媒装置に通す。チタンには超親水性の特質があり、光を当てることで浄化作用が働いて水が殺菌され、かつ薄い膜でも版になじむようになる。次に、きれいになった真水の表面張力を低下させ、それを印刷機の水舟に供給する。版から戻ってきた余り水は湿し水タンクに戻して循環させ、水が足りなくなったら水道水を再供給する。

  「てんとう虫801」

 「てんとう虫801」

 

 

■ 薄いインキ膜圧で従来に勝る再現性を実現

 

 使用機資材については、通常版/現像レス版、油性インキ/UVインキ、各種原反の如何を問わず、現在使用のものに対応可能。また、IPAや代替品に含まれる化学薬品はインキに溶け、網点の形状を変えてしまう。その点、「てんとう虫801」では化学薬品の混入を最小限に防げるので、インキ濃度が高まり、薄いインキ膜圧で従来に勝る印刷濃度と網点が実現されるとともに、5%以下や95%以上の網点でも高い再現性を実現できる。
 インキ膜圧が薄いので水の補給量も少なくて済み、過剰乳化の危険性がほとんどない。そのため全体にコントラストや表面光沢が増大しつつ、ゴースト傾向は小さくなる。さらに、インキ膜圧が1割薄くなるとインキコストが1割削減される上、乾燥性も良くなることからパウダー噴霧量を少なくすることができる。

 同社では、まず2009年4月に菊全判4色機の1台に、続いて同年11月に菊全判UVコーター付5色機に「てんとう虫801」を接続させた。
 もともと同社では環境保全に向けた取り組みを推進していたが、「てんとう虫801」採用のきっかけは、PAGE2007で同社の駕田毅会長が「てんとう虫801」に着目したこと。すぐに「てんとう虫801」の情報を収集して、採用を決めた。最初の菊全判4色機に取り付けて半年、予想した以上に成果が出たことから、代替アルコールの使用量が多いUVコーター付5色機にも導入する運びとなった。

堀部長代理

堀部長代理

 

 「てんとう虫801」導入前は、菊全判4色機では、代替アルコールを3%、エッチ液を1.5%添加。菊全判UVコーター付5色機では、代替アルコールを5%、エッチ液を1.5%添加していた。「てんとう虫801」導入後は、代替アルコールは使わず、エッチ液の添加量も0.5%にまで減らしている。これにより、同社全体での代替アルコール購入量は、直近となる2月期は前年比で26%も減少。またそれとともに、パウダー使用量も削減された。

「てんとう虫801」導入にあたっての前準備としては、インキローラーと印刷機の湿し装置の調整や、水道水のpHと同じになるように清掃をした程度で、設置したその日に稼動した。実際に印刷を担当するオペレーターは、従来よりも網点の再現がシャープになったと評価している。さらに、ノンアルコールで印刷することで、色の抜けが良くなったとの意見もある。
 また、pH測定を行いながら、定期的に水を交換するため、オペレーターの水の管理に対しての意識が強くなったそうだ。そして当然のことながら、代替アルコールを使わないことは、オペレーターの作業環境や健康にとっても良いというメリットもある。
 このように、常に環境と品質を追求し続けてきた同社は、1953年に大阪コロタイプ印刷株式会社として創業。1970年の大阪万博を機に、業界で初めてアルバムの巻末に社会の出来事を掲載した。1971年に現在の社名に変更。それと同時に、Dタイプ製版技法(オフセットダブルトーン印刷)を発表した。当時、卒業アルバム業界はモノクロのコロタイプ印刷が主流で、写真を拡大させてダイナミックな編集ができるDタイプ技法はブームとなった。

   

■ 卒業アルバムのオールカラー化へ  時代の変化に沿った商品開発

 

アルバム業界はまだモノクロ印刷の時代であった1974年、アルバムのカラー化に向けた研究開発に着手し、印刷仕上げサイズ原寸プリント(反射原稿)から製版するレフカラー印刷法を完成させ、全国7営業所各地でカラー印刷アルバム作りのゼミナールを開催。モノクロ料金でカラーアルバムができるという思い切った戦略で、オールカラーの卒業アルバムという新時代の幕を同社が開けた。
 その後も、時代の変化に沿ったアルバムの開発を展開。家庭用ビデオやパソコンの普及にともない、1993年には音声をセットにした立体的な新時代のアルバム「ダイコロビデオアルバム」を開発し、さらに2001年にはCD-ROMの「ダイコロディスクアルバム・D2A」を発表した。この、アルバムに入りきらない沢山の写真がディスクになって付いているという業界初のアルバムをはじめ、創造性、オリジナリティのある商品作りで、現在の規模にまで成長を遂げている。


 同社のアルバムには巻末に、在学中の世界の出来事をまとめた年表や、環境ニュースを掲載している。「卒業アルバムにおいてトップシェアを占める当社は、商品を通じて100万人の若者に向かって、強いメッセージを発信することができる。次代の社会を担う彼らに対して情報発信力を持つ者の使命として、地球環境問題の意識を高めてもらうべく、このような試みをしている」と、同社印刷部の末光興至部長はその取り組みの狙いを語る。

 スクールアルバム

スクールアルバム

 

D2A(CD-ROM版)やDVDをセットにした 記念アルバム

D2A(CD-ROM版)やDVDをセットにした

記念アルバム

   

■ 環境問題の啓発活動に注力 100万人の若者にメッセージ

 

もちろん、顧客(発注者)やエンドユーザー(学校関係者、卒業生、生徒父兄)に、印刷の専門技術について理解してもらうのは難しい面がある。しかし、環境対応に力を入れる同社では、「アズーラ」や「てんとう虫801」などに関する環境活動を、ホームページや顧客向けに配布する月刊ニュース、業界紙などを通して、啓発活動を続けている。
 末光部長は「印刷技術の進展は、廃棄物削減・リサイクル活動など、学校での環境教育の好材料になる。エンドユーザーにもわかりやすい文章を心掛け、今後も広報活動を続けていきたい」と言う。
 官公庁などからの印刷物発注では、再生紙や非木材系製紙原料(ケナフなど)の使用が指定されることが多くなってきた。また、学校案内(カラーパンフレット)の印刷にエコマーク認定のインキ使用を指定し、そのインキの「エコマーク商品認定証」を使用証明書に添付して提出するようにと指示を出す学校もあるという。それらのニーズに応えるため、印刷用紙、インキのいずれも指定に適合する材料を日常的に使用している。
 今後は個別の対応だけでなく、環境対応印刷の公式アナウンスができるような「ダイコロ印刷基準」の策定に向け、計画を進めている。
 同社は写真を主とした記念アルバムを得意とし、その他、創立記念誌や社史などの各種記念誌、写真集、学校案内などを手がけてきた。最近では本とDVDがセットになった「Lifegraphライフグラフ」や1冊から作成できる写真集・アルバムを発表し、脚光を浴びている。

 

■画像データバンクを構築 生涯にわたる思い出づくりを

 

 今日の情報化時代では、記憶を残したいという人間の普遍的な欲望に応えつつも、氾濫する情報をどう整理、統合、活用するかが問われている。同社は、これまで蓄積したノウハウを活かし、トレーサビリティー(追跡可能性)を加味した画像データバンクを構築し、一過性のプロダクトを超えて、生涯にわたってパーソナルニーズに合わせた思い出づくりをサポートする新たな商品・サービスの開発、提供を目指していく。

 大阪工場全景

 大阪工場全景

 

本とDVDがセットになった「Lifegraph ライフグラフ」

本とDVDがセットになった「Lifegraph ライフグラフ」