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井上紙工印刷株式会社

大判印刷でアズーラ速乾印刷を開始

現像レスに加え、損紙やインキ量も削減

2014年5月 月刊印刷界掲載 

 
 いま、印刷業界で注目を集めている、枚葉オフセット印刷における油性インキによる速乾印刷。この速乾印刷を手掛けることにより、▽インキ乾燥が速くなる、▽印刷時に水を絞ることから印刷物に艶が出て品質が向上する――といったメリットがあることはよく知られている。そのような大きなメリットに隠れがちだが、速乾印刷をすることによって、同じインキ量でも濃度が上がることからインキ使用量が減少し、かつ刷り出し後すぐに色出しができることから損紙量を大幅に抑えることができるなど、環境負荷軽減にもつながる。   inoue3906.jpg
    井上慶一郎社長
井上紙工印刷(株)(本社・福岡県朝倉市持丸625の1、井上慶一郎社長)では今年6月から、日本アグフア・ゲバルト㈱のコンサルティングを受けて速乾印刷に取り組み、アグフア社製CTPプレート「アズーラTS」の使用による現像レスの効果と速乾印刷によって環境負荷軽減への取り組みを加速させていく。
   

高級印刷物のベタ物に対応する切り札となる速乾印刷

 同社創業者の一族の本家が手漉き和紙の製造をしていたことから、その和紙を用いたふとん袋製造をルーツとする同社。印刷事業については昭和41年から開始し、当時はハトロン全判の印刷機で冠婚葬祭時に飾られる花環の下にある名札台紙の印刷からスタートした。その後、ハトロン全判という大きさを活かして包装紙の印刷へと進出を図り事業を拡大。現在も包装紙や手提げ袋といった包装資材をメーン品目とした営業展開をしている。包装資材の印刷をしていることから、現在でも大判印刷機を保有しており、同社の印刷機のラインナップは、A倍判4色機が2台、菊全判4色機、菊全判2色機、四六四裁判の2色両面機、軽オフ機のほか、今年5月に導入した紙器印刷用の菊全判UV8色機という構成を敷いている。

 

 同社が手掛ける包装資材は、高級ブランドのものも多く含まれる。そのデザインで多用されるのが、ベタ部が多いものだ。製品を立体にした時に部位によって濃度が違うとすぐにクレームが入る上、インキ使用量は多く、そしてインキ乾燥にも時間がかかる。印刷が難しいことから、たいていの印刷会社は敬遠しがちな仕事だが、同社は敢えてその分野のエキスパートとしての道を歩んでいる。

 

 その分野では現在、同社の主な競合相手は新興国の印刷会社だ。包装資材でロットが大きいものについては、コストを抑えられることから新興国での生産が増えている。そのような中で同社に求められるのが、たとえば『数万枚の手提げ袋を作るにあたり、海外生産での納期リスクを考え、最初の1000枚だけは国内で作る』といったケースだ。このようなケースでは当然ながら、小ロットかつ短納期となる。したがって同社では、印刷以外にもプリプレス工程のほか、ラミネートや箔押しをはじめとした表面加工や製袋などができる設備も保有し、あらゆるアプリケーションを社内で一貫生産する体制を整えている。逆に言えば、設備体制によってこれ以上の短納期化を図ることは難しい。残る大幅な時間短縮が図れる工程、それが印刷後のインキ乾燥時間だ。

 ベタ物の印刷が多い同社では、元々インキ乾燥を速めるためのノウハウを蓄積していた。そのきっかけは平成21年、「アズーラTS」の採用だった。「当社の仕事はベタ物が多いのでインキの乾きがとても遅かった。当社独自のノウハウによって極力水を絞って印刷をしてはいたが、砂目構造が均一でしかも浅くて細かい“アズーラTS”は水を絞った印刷に向いていることから、いっそうの進化をするために採用を決めた。しかも、包装資材を発注する会社は使用する資機材の選定などで環境配慮にも気を遣うことが多いので、現像レスで環境負荷が少ないことも“アズーラTS”採用のポイントの1つとなった」と語る同社の井上社長。同社ではそれと同時に、A倍判サーマルCTP「アバロンN16」、プリプレスワークフローシステム「アポジー」、高細精XMスクリーニング「スブリマ」も導入。さらに、環境保護印刷認証制度の最高ステータスである「クリオネマークGOLDプラス」も取得している。 

   

 インキ乾燥の時間を半分に

 社内技術継承の円滑化にも

 独自のノウハウによって水を絞った速乾印刷をしてきた同社だが、今年6月から日本アグフア・ゲバルトのコンサルティングの下で速乾印刷技術を確立していく。「速乾印刷の確立には、印刷機の状態を新台の時のようにするリセット作業、そして日々のメンテナンスが重要な要素だと聞いている。そこでまずは、当社のセールスポイントであるA倍判4色機のうちの1台から始め、それからほかの印刷機に水平展開していこうと考えている。当社でも、水を絞って乾きを速くする独自ノウハウを活用しているが、これは各印刷機の機長の技術力に頼っているものだ。そこで今回、日本アグフア・ゲバルトのコンサルティングによって速乾印刷技術の標準化を図っていく。数値による品質管理ができれば、長い目で見た時の技術継承もしやすい。また今回のコンサルティングによって、“アズーラTS”の特性をさらに引き出してもらうことも期待している」(井上社長)

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 設置に大きなスペースを要する自動現像機が不要なので、

コンパクトに収まるA倍判CTP

同社ではこれまで、紙質によって異なるが、ベタ物の場合はインキ乾燥のための時間を約24時間とっていた。それを今後は、半分から2/3に短縮する。「インキの乾きが悪いと、フィルムを貼った時に剥離してしまう。そこで、インキを完全に乾かすために物によっては2-3日置いておくこともあるが、それも短くでき、後加工のスケジューリングもしやすくなるだろう。また、1枚当たり数十円もする高い紙を使うので、色出しが早くなって数十枚程度にまで損紙を減らすことができるという効果にも期待している」と井上社長は速乾印刷に寄せる期待を表す。 
   

水を絞ってファンアウトを抑制して、新規事業へ進出

 「アズーラTS」の採用とセールスポイントの大判印刷を組み合わせ、同社では5年前に新たなビジネス分野への進出を果たした。それが地図事業だ。「大判印刷ではファンアウトが起こりやすいので見当精度にとても気を使うが、水が絞れる“アズーラTS”の採用によってその問題が軽減された。地図の印刷では特色を使用した10色・20色を使うケースもある。仮に12色でも4色機で3回通すので、印刷時には精緻な見当精度が必須となる。水を絞らなければ見当が合わないので、この仕事は“アズーラTS”の採用がベースとなっている。また、使用する特色の色数を減らすために、色再現領域が広がる高精細印刷を用いて、特色をセットインキで再現する場合もある。この場合でも、現像レスなので網点にブレがない“アズーラTS”の特性と、XMスクリーニング“スブリマ”を使った340線での印刷を活用している。新たに採り入れた技術と開拓しようとしていたビジネスの方向性がうまくマッチした」と、同社の井上社長は地図事業に進出した鍵を述べた。

 また続けて、「A倍判の印刷機を使うということは、CTPもA倍判となる。これまで、自動現像機の清掃が、大きなA倍判なので大変な作業となっていた。これが“アズーラTS”を採用したことで、現像機と現像液がなくなり本当に楽になった。現像液の購入やその廃液処理コスト、そしてメンテナンス時間の大幅な短縮によって、月間で0・5人分の人件費削減に相当するコスト削減効果が得られている」と「アズーラTS」導入のメリットを評価している。 

 

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井上紙工が制作する手提げ袋のデザイン

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まず、このA倍判4色機から「アズーラ速乾印刷」を始めていく

 

 全国の大判速乾印刷ニーズに応える仕組み作りに邁進

 速乾印刷技術を確立後は、それを維持することが大事になる。同社では現在、週6日24時間体制で、印刷機のメンテナンスは月1回、すべての印刷機を完全に止めて1日がかりで行っている。だが、印刷現場のオペレーターからは、週1回、4時間というメンテナンス時間の希望が出ているという。「オペレーターからこのような意見が出るということは、より良いものを作りたいという思いがあるからだろう。そのような前向きな気持ちに応えた設備や仕組みをできる限り用意したい。コンサルティングを受けることにしたのも、その思いに応える1つとなる。コンサルティングを通して、さらに高い意識を印刷オペレーターに持ってもらうとともに、この速乾印刷が多くの会社でコスト改善や経営改革効果を上げていることは聞いているので、会社全体に良い影響が波及することを期待している」と井上社長は、速乾印刷を起点とした波及効果への期待も語る。

 そして、「やはり速乾印刷の最大の魅力は短納期対応力だ。社内生産の短納期化はもちろんだが、全国の印刷会社には納期で悩んでいる営業マンがたくさんいるだろう。当社の大判×速乾印刷によって、そのようなみなさんの役に立っていきたい」(井上社長)

 

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