TOP > インタビュー・事例紹介 > アズーラ導入事例 > 鼎談_“速乾印刷”は経営革新のキーワード_2014.7

鼎談 “速乾印刷”は経営革新のキーワード 

「アズーラ」が現場の課題解決

公益社団法人日本印刷技術協会 郡司 秀明 理事・首席研究員

日本アグフア・ゲバルト株式会社 松石 浩行 社長

同プリンティング戦略部 知識 三富 部長

 

日本印刷新聞 2014年7月7日号掲載 

 

 印刷業界が直面している短納期とコスト削減の解決に一石を投じるべく日本アグフア・ゲバルト㈱(本社・東京都品川区、松石浩行社長)が、数年前に提唱した「現像レスプレート:Azura TS(アズーラTS)を使用した油性印刷による速乾印刷」、そして今年になってその技術を応用して開発された「オフ輪での低温乾燥印刷」は、ともに印刷会社の経営革新を引き起こす画期的な技術として業界に大きな波紋を広げ、勢いが止まらない。最近では「速乾印刷」は経営革新のためのキーワードとしてすっかり浸透し、まるで流行語にさえなっている。そして、この速乾印刷の確立に欠かすことのできない「印刷機のメンテナンス」の重要性についても改めて注目が集まっている。公益社団法人日本印刷技術協会の理事・首席研究員の郡司秀明氏を招き、業界全体から見たアズーラ速乾印刷について、日本アグフア・ゲバルトの松石社長、同社のプリンティング戦略部の知識三富部長を交えて語り合ってもらった。

 
jagat_DSC05980.jpgjagat_DSC05992.jpgjagat_DSC05996.jpg  左より、郡司氏、松石、知識
   

 郡司 さて、昨今の印刷業界ですが、単に設備を更新して高速化・合理化を行うという従来のような投資戦略だけでは展望が開けなくなりました。そういう意味では、数年前からアグフアさんが行っている「速乾印刷」は、実に明快でわかりやすいソリューションだと思います。何せ特別な投資をすることなく「速乾印刷」ができるというのは、本当に目からうろこでした。結果的に業界のレベル向上にも貢献できますね。

  松石 ありがとうございます。「通常のオフセット印刷機を使い、油性インキで速乾印刷が可能になる」ということで、おかげさまで当社は大変な注目を浴びるようになりました。

  郡司 「速乾印刷」というその技術的な視点も素晴らしいけれど、ネーミングがまた単純明快でわかりやすいですね。我々は長い間、「保水性の良い、汚れ難い版材(アルミプレート)」だけが良いと信じてきましたが、「保水性が良い」ということと、「水が絞れ、乾燥が速まる」こととは、相反することなんだ?というアンチテーゼを投げかけたわけなのですが、このことで印刷業界の技術向上につながるなら大変良いことだと思います。

 たしかに保水性の良い版でも、しっかり管理している印刷会社なら水を絞れるのは事実でした。しかし、水持ちが良い場合にはついつい水を多くしてしまいがちになってしまうのもまた事実だったと思います。保水性の良い版の場合には「これでも刷れる」「水が多い方が楽」という逃げが打てたということが言えるかもしれません。

  松石 世界で最初の「検版できる現像レスプレート」として販売を開始したアズーラですが、今まで日本で販売されている従来版と比較すると、「砂目が浅く、細かい」ために、保水性という意味ではたしかに劣りました。したがって、従来版用に設定された印刷機で印刷すると、どうしても汚れが出やすかったのです。お客様から頂戴したクレームのほとんどはこれに起因するものでした。製造メーカーとしては、アズーラがとくに保水性が劣るとは考えていませんでしたが、日本の印刷会社の印刷機がそもそも水をたくさん含むプレートに合わせて調整されていたため、そのままアズーラを使うと、結果として汚れが出やすかったのです。

  郡司 つまり、現在の日本の多くの印刷会社の印刷機の状態では、「アズーラは、現像レスなので環境には良いけれど、汚れが出やすくて刷りにくい」プレートという印象が強くなってしまったということですね。そのままですと、アズーラは今のような大ヒット商品にはならなかったかもしれないわけですね?それがどうして、「速乾印刷」に繋がったのですか?

  松石 アズーラを販売しはじめた当初、たしかに「汚れが出やすい」というお客様もありましたが、と同時にそれとは逆に「アズーラは水が絞れ、インキも絞れる。しかも乾燥が速く、さらに網点品質も濃度も上がる」という高い評価をされるお客様もたくさんでてきました。その評価の違いは一体どうしてなんだ、と当社社内でも大きな問題となりました。そこで、1社1社調査した結果、アズーラでクレームのまったくでない、印刷技術レベルの高いお客様は、例外なしに印刷機の状態とメンテナンスが完璧に近かったということがわかったのです。そこで、逆にクレームのあったお客様には印刷機をメンテさせていただき、ほとんど解決することができました。

  郡司 ただ単にアズーラを使うだけではアズーラの良さはわからない。さらに、アズーラで速乾印刷を実現するためには、印刷機がしっかりメンテされていることが前提なのですね。そこで、プレートメーカーであるアグフアさんが、印刷機のメンテナンス指導まで手を拡げたわけですね。アグフアさんで印刷指導をされている知識さんは、以前は大手インキメーカーに居られたそうですが、アグフアさんにスカウトされて転職されたのですか?

  知識 今から6年前、私がインキメーカー在職中にアズーラが発売されました。実はその時から、アズーラは「水が絞れる」素晴らしいプレートだと気付いていました。適性乳化を実現し、速乾にも繋がる素晴らしいプレートだということも知っていました。正直言うと、当時からこのアズーラに惚れ込んでしまいました。しかも、数年ごとにどんどんバージョンアップされる。未来のプレートだと確信していました。しかし、その当時に勤めていたインキメーカーは他社プレートメーカーの1次代理店だったため、アズーラをお客様に奨めることができませんでした。そこで、自らアグフアさんに転職を申し出ました。アズーラを自分で広めたかったのです。実は、プレートを本当に評価できる業界の技術者であればみんな、アズーラというプレートが、いかに性能が良い画期的なプレートかを知っています。

   

水とインキが絞れる 3日でエッセンス伝授

 

 郡司 話を戻すと、アズーラという版は技術レベルの高いお客様や、知識さんのような見る目のある人から、「水が絞れて、インキも絞れる」という長所があることを指摘されて、初めてその性能に気付いたということですか。その結果、「速乾印刷」をはじめ損紙削減まで、可能になるということもわかったわけですね。わかりやすく言えば、水が多いとインキ濃度が上がらず、その分インキを盛らなくてはいけなくなり、その結果インキ量を増やした分だけ乾燥も遅くなるということだったと思います。逆説的な物言いですが、アズーラの場合は水を多くできないという見方もできるということです。

 松石 そうですね。全国のお客様と、何人かの印刷コンサルタントと言われるみなさんのおかげですね。

 「アズーラを使えば水もインキも絞れ、パウダーは激減し、ファンアウトもなくなり、自然に速乾印刷ができる」という衝撃は、自分たちにとってもとても大きかったです。しかも、その成功が数社だけでなく、さらに印刷機や油性インキやエッチ液の種類には一切関係なく、全国あちらこちらで、「アズーラによる速乾印刷が実現できた」というお客様がどんどん増えていくことはとても誇らしくもありました。

  郡司 しかし、アズーラを使える(評価する)ユーザーは印刷技術のレベルが高く、「アズーラでの速乾印刷」は大変な福音となるでしょうが、逆に「使えない」というユーザーはレベルが低くアズーラを使うメリットは出てこないということですか?

  知識 実は、そうではないのです。「アズーラが使えない、汚れやすくて困る」と言われる印刷会社のオペレーターさんや機長さん達のほとんどは、行うべきオフセット印刷機の基本的なメンテナンスの方法をご存知ないだけなのです。驚くことに、そういう基本的なメンテナンス教育を受けていないのです。印刷機は使えるのに、正しいメンテナンスの仕方をご存知ないのです。そこをお教えするだけのことです。

jagat_DSC06004.jpgjagat_DSC06007.jpgjagat_DSC06006.jpg
   

  郡司 基本のメンテナンスができていないから、アズーラも使えないわけですね。紙を積む作業には何年もかけるのに、メンテナンスの教育には関心がないというのもおかしいですね。

 たしかに、技術レベルが高いと言われる印刷会社は、例外なく現場が綺麗だし、印刷機のメンテナンスもしっかりされています。そのメンテナンスの教育というのは、具体的にはどういう内容ですか?

  知識 はい。簡単に言うと、印刷機の要所の調整と数値に基づいた管理、正しい運用方法などです。それらを理解して頂ければ、誰にでもアズーラによる速乾印刷は実現できるのです。その指導を私が責任を持って行います。最大でも3日間もあれば、完璧にエッセンスを伝授できます。

  郡司 どのような場合もネガティブな意見はあるものですが、巷では「そのメンテナンス作業は大変だ」という噂がありますが?

  知識 修得すべき技術は、意外とシンプルなのです。正しいインキローラーのメンテナンス・ニップ圧の調整・水管理の方法を修得すれば、80%終わったようなものです。大した作業ではありません。何年も手入れらしい手入れをせずに使ってきた4色機でも、1-2日の手入れで新品同様に生まれ変わらせます。その後は、1日に20分、月に2-3時間のメンテナンスを継続するだけで、「速乾印刷」は持続できます。

  郡司 その程度の手間ですか?それだけで速乾印刷ができて、かつ損紙・パウダーが減らせるのならやらない手はないですね。しかし、なぜそのようなメンテナンスの基本をこれまで印刷機メーカーは啓蒙してこなかったのでしょうか?

 知識 メーカーからすれば、すでに何年も前に販売してしまった印刷機です。今、改めてそのための教育をしていては利益にはなりませんし、手も回らなかったというところが正直な答えではないでしょうか?

 とくに印刷機はこの30年間でモノクロからカラーへの移行、CIP3をはじめとするデジタル化、洗浄や版替えなどの自動化が急速に進み、誰にでも使えるということがキャッチフレーズになってしまっています。これは大きな間違いです。オフセット印刷機の中身はプロ仕様なのです。何も変わっていません。アナログの塊と言えます。アナログの機械にはメンテナンスが絶対に必要なのです。

  松石 メンテナンスをしっかり行えば、印刷機は新品同様で使え、故障も減ります。さらに、損紙を大幅に減らせ、刷り出しまでの時間も大幅に短縮でき、かつ印刷品質も上がります。良いことずくめです。しかも新たな投資はゼロなのです。

 知識 長年、「過乳化の状態の印刷機」を使ってきた結果、印刷会社のほとんどの現役の印刷機は常に不安定な状態にあります。しかも、従来のプレートは水を多く抱え込むため、印刷用紙には水がドンドン供給され、乾燥しにくく、大量のパウダーも必要とし、擦れや断裁での裏移り事故なども発生するわけです。その印刷機の過乳化状態を是正させ、オフセット印刷の本来の姿である水を絞った印刷が行えるように継続的にメンテナンスを行うのですから、当然トラブルは減ります。水を絞ることはオフセット印刷の基本なのです。そして水を絞った印刷をするにはアズーラの砂目が最適なのです。

 

 recommend_img01_02.jpg

実演により、“速乾”を体験

 syukosya_seminar.jpg

全国で開催しているアズーラ速乾印刷セミナー

いかに高める競争力 不可欠な印刷機のメンテ

 

  郡司 アグフアさんのコンサルさえ受ければ、格別に印刷レベルが高くない印刷会社でも速乾印刷を実現できるのですか?

  知識 我々が印刷機のメンテナンスの指導をしたお客様は、100%速乾印刷が実現できています。しかし、1度速乾印刷を実現してもそれを維持するための継続的なメンテナンスができずに挫折されてしまうお客様も残念ながら全体の約5%、つまり20社に1社ほどおられるのも事実です。

  松石 我々がお伺いして、印刷機の調整を1度行えばそれだけで終了ということではありません。印刷機はその後も使い続けていくわけですから、定期的・継続的なメンテナンスは絶対に必要です。それを継続できるかできないかは、現場というよりも、経営者の方針の問題とも言えます。

  郡司 今後ますます、短納期・小ロット化が進む中で、私はこれからの印刷業界のキーワードは「ギャンギングと乾燥性」だと考えています。アグフアさんの提唱する「油性インキによる速乾印刷」を実行しないとしたら、その印刷会社はUV印刷機を導入するしかないですね。

 知識 仮に百歩譲ってUV印刷機を導入するにしても、水とインキは絞るべきです。UV印刷機は強制乾燥するものですから、ついついインキも水も多めに出してしまうものです。その結果、輸送中にインキ皮膜が破損してコスれ汚れになってしまいます。これでは高価なUV印刷機を導入した意味がありません。UV印刷機こそ水を絞るべきなのです。

  郡司 たしかにそうですね。UV印刷といってもオフセット印刷に変わりはないわけで、オフセット印刷の原理である「水を絞ってインキを絞る」という基本は一緒ですね。ところでUV印刷機の強制乾燥といえば、先日大変な反響のあった紅屋オフセット㈱で実現した「オフセット輪転機」での速乾印刷はこの理屈と同じですね。

 知識 その通りです。オフセット輪転機は強制乾燥が原則です。その結果、悪いことにほとんどのオフセット輪転機のユーザーは「水とインキ」の供給量を気にしていません。紅屋オフセットの今井社長も言っておられますが、輪転機でのトラブルのほとんどが水を出しすぎることに起因する事故だそうです。たしかに、乾燥不十分や火じわ、インキだれによる汚れなどは、すべて元をたどると、過剰な水・インキの供給が原因です。

 郡司 そこで、オフ輪でも水とインキを絞った印刷をするために、アグフアさんが枚葉オフセットで確立した「アズーラ速乾印刷方式」の応用になったわけですね。

 知識 紅屋オフセット様でアズーラを使って水とインキを絞ったところ、インキ量は10%以上の削減ができたそうです。しかも、それでいて印刷濃度は上昇し、網点品質も格段に良くなったと今井社長も喜んでおられます。何よりも、水を絞っているので強制乾燥のための温度が低温で済み、電気代が大幅に削減できたのは本当に助かったと実感されています。

今井社長ご自身も、昔から「水を絞れ」と現場には注意していたというのですが、「社長の言うことはなかなか聞かない」状況だったそうです。しかしアグフアの提案やアズーラの持つ「水が絞れる」という特性に共感され、当社でご支援させて頂くことになったわけです。まずは枚葉オフセットでの成功事例をあげながら印刷現場の方に説明会を開催したところ、若いオペレーターの方から「面白そうだ、チャレンジしたい」と乗り出してくれ、今や9台すべてのオフ輪印刷機で「低温乾燥印刷」の確立に向け進行しています。燃料・電気代高騰の中にありながら、クライアントからのコスト引き下げ要求の厳しいオフ輪業界ですが、私どもの提案が少しでもお役に立てればと願っています。

 郡司 「低温乾燥印刷」というのもまたまたわかりやすい命名で感心しました。

 松石 残念ながら、「低温乾燥印刷」は私どもの命名ではなく、今井社長によるものです。自社の改革を真剣に考えてこられた社長だからこその的確な命名だと思います。今後のオフ輪業界での目標となるキーワードになるのではないでしょうか。

 郡司 とにかく、印刷現場にはまだまだお金がたくさん落ちているということですね。しかし、そこで長年働き、慣れきった現場のみなさんにはそれが見えなくなっている。印刷会社の社長も、印刷工場を現場に任せっきりの方が多すぎますね。

紅屋オフセットの今井社長のように、製造業の経営者として、自社の製造現場に競争力をいかにつけるのかということを、経営者自身が自分で判断・決意しなければなりませんね。

 私は、「印刷会社はやり方次第で、まだまだ十分に儲かる」というのが持論でしたが、アグフアさんとお話して再認識できました。アグフアさんにもこの取り組みをもっともっと広めていって欲しいと思います。

  導入実績   btn_product.jpg   btn_top.jpg