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インタビュー 株式会社東京テックプラス

アズーラ速乾印刷技術がもたらす印刷のリストラクチャリング

東京テックプラス 加藤隆行社長に聞く

枚葉機でヤレ紙75%、インキ量30%削減、「昭和の印刷」から「平成の印刷」へ

 

印刷ジャーナル 2014年6月15日号掲載 

 

 現像レスプレート「アズーラ」のフラットサブストレートと呼ばれる、浅くて細かな砂目構造を活かした速乾印刷への取り組みで印刷業界に一石を投じた日本アグフア・ゲバルト(株)(松石浩行社長)。短納期、品質向上、ヤレ紙・インキ削減による大幅なコストダウンという多彩な効果を弾き出し、その先にある経営革新ソリューションとして話題を呼んでいる。そこで今回、アグフアとタッグを組み、「速乾印刷」の火付け役となった(株)東京テックプラスの加藤隆行社長に、「アズーラ速乾印刷」訴求の背景やサポートの全容、資材コスト削減効果などを中心に話を聞いた。

kato_P1100117.jpg 加藤社長

 
   

 印刷機は導入された時点ですでに「新台」ではない

 

 アグフアとの協業による速乾印刷への取り組みのきっかけとなったのは約3年前、ある地方の印刷会社で起こった印刷トラブルだった。その会社は4ヵ月前に導入した新しい印刷機にも関わらず、「アグフアの現像レスプレート『アズーラ』では刷れない」ということだった。

 しかし私が先方に出向き、たった2時間ばかりのコンサルティングを実施した結果、何ら問題なく刷れた。原因はインキの過乳化。印刷機は導入された時点からすでに「新台」ではない。そもそもその部分の認識が間違っている。その会社のオペレータは「印刷機の洗浄も手入れもやっている」と話すが、自動洗浄機能だけで「洗えている」という認識が誤りである。

 

 2時間のコンサルティングで実施したのは、ローラー洗浄と私が開発した湿し水への切り替え、たったそれだけである。この話がユーザーを通じてアグフア側に伝わったことがひとつのきっかけとなった。

私は、およそ35年前から「3分間乾燥印刷法」を提唱し、自ら実践するとともに、10年前からは印刷会社への指導を行ってきた。その間も印刷機械メーカーにメンテナンスの重要性を訴え、ユーザーへの訴求を促してきたが、ここに来てようやくその認識も高まり、評価されるようになったように思う。 「数億円ともなる印刷機械の性能をフルに活かせない」、これはおかしな話である。この10年ほどコンサルティングを行う中で、「定期的に新台を入れてシビアな仕事を当てる。その性能が落ちると、また印刷機を入れ替える」という印刷会社を多く見てきた。しかし、もうそんな時代ではないことは誰もが分かっている。「1台の印刷機をどれだけ長期使用できるか」。いまは仮に20年間使うならば、その20年間は常に新台の状態を維持しながら運用しなければ利益を出せない時代である。

 

 こんな事例がある。新台導入を検討していた印刷会社を指導した際のケースだが、20年選手の国産機を数日でリセット。するとドット形状・水ダイアルなどが改善され「速乾印刷」が可能になり、充分に新鋭機に対抗できるレベルにまで改善した。返済を終えた機械で内部留保を増やしてから新台を導入する、これも経営革新と言える。

   

 歪んだ形で継承させている印刷技術

 

 アズーラと出会ってから「水が絞れるアズーラに私の速乾印刷技術のコンサルティングをプラスすれば油性インキでの最善の速乾印刷ができる」という認識を共有しながらアグフアとのコラボレーションを展開してきた。

 多くの印刷会社は、メーカーに「とにかく汚れない湿し水、汚れないプレートを持ってこい」と言う。それが良い資材だと思っているわけだ。しかし、それで良い印刷物ができるのか、また速乾ができるのか、というと答えは「NO」である。自ら湿し水を開発したのは、「汚れない湿し水」ではなく、印刷機の状態が整った時に「過乳化しない湿し水」が必要だったからである。

 印刷会社は製造業のプロである。車に例えると、プロドライバーが「誰でも運転できる車がほしい」と言うだろうか。それでは困る。また、整備されていない印刷機を1万8000枚/時で回すということは、真っ暗闇の中をヘッドライトを消して走っているようなもので、安全のためには回転数を落として印刷することになる。これらの現象を引き起こしている最大の問題は「教育」だと考える。

 多くのオペレータは、「前の機長がそうやっていたから」と言う。たまたま入社した印刷会社で、紙積みを10年、そして先輩の機長がやっていたことを何の疑いもなく真似る。つまり、日本における印刷の教育制度の欠如が、技術を歪んだ形で継承させている。

また、印刷会社の経営者が資材の選択をオペレータに任せていることも問題のひとつ。つまり、オペレータの好みで資材が決まっている。そこで選択のキーワードとなるのは「汚れない」ということになり、それでは経営改革やコスト削減に繋がらない。オペレータの多くはまだまだ職人気質で保守的である。

 

 この状況を作り出しているのは印刷現場を知らない経営者でもある。1円でもコスト削減を追求するのが経営者の仕事である。逆にこれをしっかりやっている会社は腕の良い印刷会社。「上手い」と言われる会社は、ヤレ紙は少なく、生産性も高い。強いてはコスト競争力も高いわけだ。

 

 また、資材単体の単価だけを見たコスト削減ではなく1シートあたりのコストを試算することが重要である。だからこそアズーラを軸とした印刷の原理・原則と資材・コストを見直すという「速乾印刷」の取り組みは、業界に一石を投じたと自負している。

 

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速乾印刷セミナーでの講演

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アズーラ速乾印刷の実演

 

オフセット印刷の原理原則

 

コンサルティングの第1段階は、まず印刷機をリセットすることからはじまる。1〜2日かけてローラーの手入れを施し、新台の状態に戻すわけである。そして、その後印刷機をどう管理していくかが肝になる。決して難しいことではなく、「水とインキを絞ることで最も美しい印刷物が仕上がる」という「オフセット印刷の原理原則」を理解してもらい、そして適切な洗浄液でインキローラーを洗い、ニップ圧を調節していくだけ。これらを実際に実践しているところは少なく、とくにニップ圧の調整の方法さえ知らないオペレータもいる。もっと酷くなると、機長でも「網点を見たことがない」というケースもあった。

 繰り返すが、決して難しいことではない。我々が指導するのは「速乾印刷のための技術」ではなく、「オフセット印刷本来の原理原則」、そして現状の経営資源で改善を施すリストラクチャリングなのである。この体制をたった2〜3日で立ち上げ、あとはユーザー側による簡単なメンテナンスで運用を継続できる。それだけでUV印刷並みの速乾を油性印刷で実現し、短納期、品質向上、ヤレ紙・インキ削減による大幅なコストダウンを達成し、とくにヤレ紙の削減は、経営に大きなメリットをもたらす。

枚葉機の場合、印刷機械メーカーからは4色印刷でヤレ紙は200枚が標準と言われるが私のコンサルティングによって1/4の50枚にまで削減できた。 1ジョブあたり150枚の削減となると、全判1枚10円で換算すれば1500円、これを1日20ジョブやれば3万円のコストダウンになる。

 なおかつ、色出しに40分かかっていたものを10分以内に短縮できる。オペレータ1人あたりの人件費を2500円/時とすれば、菊全クラスだと2人で5000円/時、30分の時間短縮が実現すれば、その半分の2500円/時が確実に浮いてくる。さらにヤレ紙削減効果と併せれば、1ジョブあたり4000円、20ジョブだと8万円のコストダウンが可能になる。

さらに比較が難しいが、枚葉機の場合のインキ削減効果は3割程度見込める。また、湿し水のコストにしても、例えば私が開発した湿し水の価格は市販品の倍程度するが、1ヵ月に1回交換していたものが3ヵ月に1回の交換で済む。3倍の期間を使用できれば、1シートあたりのコストは非常に安くなる。先にも言ったが1シートあたりのコストを考えることが重要である。

 

 現在、オフ輪でのアズーラ速乾印刷にも着手している。まだはじまったばかりのため、正確な効果を数値化できていないが、インキの使用量については、ざっくり3割程度の削減効果は出ている。

 そのオフ輪の機長に聞いたところ「従来、黄色と墨はかなり上げないと色が出なかったのに対し、いまでは逆にかなり下げないと色が合わない」という。これが本来の姿なのである。

 

網点変動がなく、否が応でも水を抱え込まない「アズーラ」

 

「アズーラが速乾印刷に適している」。この理由はフラットサブストレートと呼んでいる砂目の特長にある。浅くて細かな均一の砂目構造により水を絞れ、適正な水量・インキ量で印刷でき、油性インキでの速乾印刷を実現できるというわけだ。

 私は昔からハイデルベルグの印刷機を使っており、また、ブランケットメーカーであるコンチネンタルのアドバイザーもやっている関係からドイツの印刷事情に詳しい。10年程前にそのコンチネンタルのインストラクターから「日本の印刷会社は水が多すぎる」と言われたことがある。

 ドイツの場合、汚れは自分たちの技術で直すもので、決して資材に頼るものではないという考え方がある。「汚れる」ということは過給水か少給水が原因だが、日本の場合、ほとんどが過給水によりインキとの乳化率のバランスを崩しているのが原因である。その改善策のひとつになるのが、浅い砂目により水を抱え込まない「アズーラ」の選択となる。

 一方、「網点変動がない」ということでも「アズーラ」の評価は高い。通常、理論値通りの網点が形成されても現像液の中で2〜3%変動する。しかしアズーラは、ケミカルを使わないため、理論値通りの網点が再現できる。

 前述のオフ輪での取り組みでは、これまでは5%以下の網が出なかったが、いまでは1%の網まで再現できている。枚葉機と変わらないレベルだ。「オフ輪では5%以下の網点は出ない。あとはカーブで調整すれば良い」という固定概念は、網点変動のないアズーラと、私の速乾印刷技術を組み合わせることで覆されたわけである。

 アグフアとの協業は運命的なものを感じる。「版以上のものは刷れない」ということ。そこで網点変動のないアズーラは有利である。

 

「印刷機」は「機械」ではなく「道具」

 

 印刷産業の市場規模はすでに6兆円を下回っており、しかも厳しい価格競争にさらされている。ここで生き残っていくためには利幅を上げるしかなく、それには無駄を徹底的に排除する必要がある。

 私が長年提唱してきた速乾印刷への取り組みによる印刷工程の再構築。そこにようやく時代が追いついてきたように思う。資材をバンバン使っても工賃が取れた時代は終焉を迎えた。いまは如何にヤレ紙やインキといったコストを減らすか。そこで印刷機のメンテナンスと効率化などにも目を向ける会社も出始めた。うれしい限りだ。

 未だに印刷現場の多くでは「昭和の印刷」が続けられているが、私のコンサルティングでは徹底した数値管理によりインキ壺は一切触らず、CIP3データですべて運用する。CIP3は完成されているため触る必要はない。そんな暇があるならばルーペを覗いてドットの形状を確認する、また濃度計で数値化する方が先である。いい加減「平成の印刷」に変わらなければいけない。

 一般的に「印刷機械」と呼ばれるが、実は「機械」ではなく「道具」なのである。「機械」とは、誰が使っても同じ製品ができ上がるもの。印刷機はそうではない。つまり道具であるから使い方も手入れの仕方も覚えなければいけない。それを教えられる機関が日本には必要だと痛感している。教育が行き届けば、正しい資材を選ぶ目も養われる。印刷も「ケミカル&サイエンス」の時代を迎えている。

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