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新星社西川印刷株式会社

創造力に寄り添う大判インクジェット事業
立体表現で新事業領域へ

 

ワイドフォーマットUVIJ|ANAPURNA H 2050i LED 導入事例

印刷ジャーナル 2022.6.15 掲載

「古き良きアナログの精神と技術を受け継ぎ、進化し続けるデジタルとの融合を目指す」─商業印刷の新星社西川印刷(株)(本社/東京都台東区松が谷4−26−4、西川晴重社長)は今年2月、アグフアのワイドフォーマットUVインクジェットプリンタ「アナプルナ H 2050i LED」を導入。クリエイターの表現活動に寄り添う大判インクジェット事業の展開を理想とし、新たな事業領域の創造に乗り出している。

「製版技術」を企業価値に

 今回、商業印刷を主体とする新星社西川印刷のワイドフォーマット事業を語る上で、まず同社が歩んできた変革の歴史に触れておく必要があるだろう。

 同社の創業は、日本が高度経済成長期を迎えて間もない1962年。現在も多くの印刷会社が立ち並ぶ台東区の下町で、刷り専門の下請け会社として産声をあげてから60年周年を迎えている。

 その社歴の中でひとつの大きな転機となったのが、プリプレス工程の改革だ。二代目をつとめる西川社長は卒業後、他の印刷会社でサラリーマン時代を過ごし、その間、印刷、製版、営業、デザインなどの幅広い経験を積んだ。とくに画像処理をはじめとした製版技術に明るかった西川社長は、家業に戻るや否や重点的にプリプレスの改革を断行。下町の印刷会社に支えられてきた「下請け」としての機能を残しつつも、製版の技術力を活かした新たな事業領域の拡大に乗り出したという。

 90年代前半の当時は、いわゆるCEPSからマッキントッシュへの移行が囁かれた頃。「当時、プロセス設備がなかったことも逆に幸いし、Macによるデジタル製版への移行をいち早く実現できた」と当時を振り返る西川社長だが、そこで「脱・アナログ」を標榜するのではなく、アナログ製版の技術や感性をデジタルの世界へと融合することで、他社には真似のできない「印刷表現力」で差別化を目指した。

 
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西川社長(右)と渋谷課長

 その技術力が多くのクライアントから評価され、「実績」を「信頼」へと繋げてきたわけだが、その結果としてグラデーションやディテールの表現など、当然のことながらクオリティを重視した仕事が口コミで集まってくることになる。そのニーズに応えるべく西川社長は、スクリーニング技術の採用を試みるが、当時FMを多種多様なラインで画一的に運用する難しさに直面していた。

 そこで出会ったのがアグフアの高精細XMスクリーニング「スブリマ」である。これは、AMとFMの技術を新たな次元で融合し、今まで通りの手順と環境で従来のAMスクリーニングと同様の刷り易さのまま高精細印刷が行えるスクリーニング技術。同社はアグフアが国内展開する初期段から技術協力にも参画し、誰でも刷れる高精細「スブリマ」の普及に貢献するとともに、「アナログ×デジタル製版技術」+「高精細」といった印刷表現で、その企業価値を確固たるものへと押し上げた。

 「いい仕事をすることで、技術力を高めてきた」と語る西川社長。現在、枚葉機は菊半裁4色機、菊全判2色機、菊全判5色機、菊全判両面8色機それぞれ1台ずつを設備。クライアントも広告代理店から出版社、そして原点でもある仲間仕事と、バランスの取れた受注構造となっている。

 

白インクで厚盛り表現

ここから本題であるワイドフォーマット分野への展開に移りたい。

 前記の通り、高品質を求めるクライアントは、常に何か新しい変わったものを求めてくる傾向にある。例えば出版社なら冊子のカバーやスリーブ、パッケージなどに対して「何らかの付加価値を付けたい」と考えている。ワイドフォーマットインクジェットプリンタの導入は、まずそのサンプルづくりの内製化がひとつの狙いだった。従来のアナログ工程では木型が必要なことから気軽にデザイン変更することは難しい。その工程がインクジェットによってデジタル化されることで、デザインや形状までをいとも簡単に提案することが可能になる。

 一方で、「私は現在65歳。息子も5年程前に入社している。今回の投資は、次の世代の新たな事業の柱にしていきたいという想いもある」との心境を語る西川社長。その経営戦略の方向性として、「出力のバリエーションのひとつであることには違いないが、それ以上に様々なデザイナーやクリエイティブなクライアントとのコミュニケーションツールにしたいと考えている」と説明する。これは同社のブランディングにも繋がるわけだ。

 

 機種選択において重要視されたのは「立体感のある描写」である。「1〜2ミリ程度の限られたインキ膜で、シャドーからハイライトのグラデーションへ如何に立体感を出せるか。この条件を満たす機種として白インクで厚盛りができるアナプルナが最も近いと判断した」(西川社長)

 また、ワイドフォーマット事業の立ち上げを担当した営業部の渋谷昭仁課長は「厚盛り表現ができるプリンタは他にもあるが、多くの機種がCMYK、あるいはニスで盛り上げる機構となっている。その中で当社は、白で盛り上げを表現することで差別化を図りたいと考えた。いま流行のファブリックパネルなどへも応用できる」と説明する。

 さらに西川社長は、「紙は白だけではないし、様々な素材への印刷も想定していた。そこに白を引くだけで絵柄が鮮明に再現され、浮き出るような立体感のある描写が可能になる」と語る。

 一方で、フラットベッドタイプも選択肢にあったようだが、スペースの問題で断念。アナプルナはロール/フラットベッドのハイブリッド仕様で、その汎用性も大きな特長である。

 

あくまで「クリエイティブ」を軸足に

 

 今回、新星社西川印刷が今年2月に導入したモデルは、「アナプルナ H 2050i LED」。最大印刷幅2・05メートル、解像度1440dpi、6色(C・M・Y・K・LC・LM)+白の仕様となっている。アナプルナLEDシリーズは、16ワット/平方メートルという高出力のUV LEDユニットを採用。アグフア独自のUVインク・テクノロジーにより、アナプルナLEDシリーズ専用に開発された次世代型UVインクは、塩ビシート、ターポリンはもちろん、多様な印刷基材に対する密着性、柔軟性、低臭性を実現しているほか、放射熱も少なく熱に弱い薄物メディアとの相性も良い。

 
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アナプルナ H 2050i LED
 

 導入から3ヵ月あまり。すでに、これまでの事業の延長線上にあるイベント関連ではタペストリーなど、出版社などからはキャンパスボードの引き合いも多い。

 一方、コロナ禍において抗ウイルスや抗菌、消臭などの機能性壁紙が注目を集める中、大手リフォーム会社との協業で、施工主の嗜好にあわせたオリジナルの壁紙を供給するプロジェクトも走り出しているという。これら「大判+オンデマンド」の要素でカバーできる商材の開発で、商業印刷の仕事ではない、あるいはクライアントではない層へのアプローチで事業領域の拡大をはかっていく考えで、アナプルナはそのためのツールであり戦略機として位置付けられる。 

 

 また、今回はプリンタと同時に、コムネット(株)(本社/神戸市中央区)が販売代理店をつとめるイタリア・SEI社のレーザー加工機「SEIシリーズ X−TYPE」も導入している。このレーザーカッターは薄い素材を得意とし、刻印もできることからプリンタとの組み合わせで表現の幅を広げる可能性を秘めている。

 新たなアプリケーションへの開発意欲を掻き立てるプリンタ+レーザーカッター。「我々だけがその活用方法を試行錯誤しても『宝の持ち腐れ』。クリエイターが創造力を掻き立て、表現できる場を提供できれば」と西川社長。今後の展開についても「あくまで当社のワイドフォーマット事業は『プロダクト』ではなく、『クリエイティブ』に軸足を置いた展開を目指す。そこで需要が大きく膨らめば、その出力業務を地方の同業者に委託していきたいと考えており、全国のアナプルナユーザーとのネットワークも必要になるかもしれない」と語る。

 「クリエイティブなクライアントの差別化を如何にお手伝いできるか。我々はそれを試されている。グラフィック、パッケージのみならず、インテリアやアパレルのデザイナー達の表現活動に寄り添うような事業展開を理想としている」(西川社長)

ShinseisyaNisikawa_2022_4_500x375.jpgレーザー加工機「SEI シリーズ X-TYPE」
 

会社紹介

新星社西川印刷株式会社

代表取締役 西川晴重

創業  1962年

資本金  4,000万円

新星社西川印刷株式会社ホームページ