TOP > インタビュー・事例紹介 > インクジェット導入事例 > 株式会社文友社_2012.09

株式会社文友社

パッケージ印刷の校正に「アナプルナMv」活用
高度なCMSにより本機からIJへ校正を移行

 

月刊印刷界 2012年9月号掲載

 

 パッケージ印刷における校正や試作サンプルでは、実製品と同じ状態に近ければ近いほど、顧客は具体的イメージを掴みやすくなる。パッケージに使う本紙で、実物と近似した色で、実製品と同じように立体成型をして確認することができれば、顧客の満足度は向上する。しかし、そのために本紙を使った本機校正をしていては、印刷会社側にコスト・時間の両面で大きな負担がかかってしまう。そこで、オフセットUV印刷機を使ってパッケージ印刷を手掛ける㈱文友社(本社・東京都墨田区、山室正志社長)では、この課題をクリアするべく、今年5月、アグフア社製の大判UVインクジェットプリンター「アナプルナMv」を導入。プリプレスワークフローシステムやCTPなどと統合した高度なカラーマネジメント環境を構築した上で、あらゆる素材に出力ができる「アナプルナMv」をプルーファーとして活用することで、この課題をクリアしている。

事務所フロアに設置し、簡単に操作ができる「アナプルナMv]

事務所フロアに設置し、簡単に操作ができる

「アナプルナMv」

 
   

■ UVインクジェットとCMSでプルーフの工程を劇的に効率化

 

 同社は、今年で創業100年を迎えた、板紙から洋紙までを取り扱う紙の専門商社。紙器製造専門の子会社として埼玉・岩槻に工場を構えるトータルパッケージ㈱(本社・東京都墨田区、日比孝至社長)を有し、パッケージ印刷事業も展開している。パッケージ印刷事業では、同社が企画立案・デザイン・営業から製版・校正までの工程を担当し、トータルパッケージが印刷・製造を担当。この同社の印刷部門では、紙器製造、とくに医薬品・食品のパッケージを主に手掛け、トータルパッケージで稼働するA倍判UV6色印刷機、菊全寸延び判UV5色印刷機を活用して、パッケージ製品を生産している。
 同社ではこれまで、校正出力については、主に社内(=本機校正)や外注(=平台校正)で本紙校正をしていた。「今回の“アナプルナMv”導入の主目的は、本機校正や平台校正をなるべく無くし、校正の効率化を図ることだった。パッケージ印刷を手掛ける同業者で、UVインクジェットプリンターをプルーファーとしてうまく活用した事例があったので、当社でもそのような手法を採ろうと考えた」と同社の河崎英之執行役員は、「アナプルナMv」導入の狙いを振り返る。

 同社およびトータルパッケージはその当時、まだCTPを導入しておらず、アナログ刷版については内製していたが、CTP出力については外注をしていた。したがって、たとえば印刷立会いをしていて色が合わなかった場合、刷版をまた外部の協力会社で出し直して、日を改めて印刷立会いをし直してもらうことになる。印刷立会いをする顧客は重要顧客なので、印刷機のスケジューリングもそれが最優先になる。すると印刷機のスケジューリングにも無理が生じ、稼働率も落ちてしまう。そこで、印刷工程での効率を上げるために、まずはCTPの導入を検討した。「当初は、CTPとUVインクジェットプリンターの導入は、別々のものとして考えていた。先にCTPの導入を考えていて、A倍判が出力できるVLFのCTPを提供しているメーカー各社から提案を受けた。その中でアグフアだけは、CTP単体ではなく、CTPやUVインクジェットプリンターを核にした統合的なカラーマネジメント構築にまで踏み込んだ、具体的な内製化・効率化のパッケージ提案をしてくれた。当社が抱える問題の解決に適した内容だったので、そこに魅力を感じた」(河崎執行役員)

  文友社の河崎執行役員

 文友社の河崎執行役員

 

 

 ■ 高精度な色表現の実現へと導くCMSコンサルタントサービス

 

 今回、同社およびトータルパッケージでは、A倍判サーマルCTP「アバロン N16」、UV印刷用CTPプレート「エナジーエリート」、プリプレスワークフローシステム「アポジー7」に加え、大判UVインクジェットプリンター「アナプルナMv」の各製品を導入。これらの機器を活用し、日本アグフア・ゲバルト㈱が提供するカラーマネージメントコンサルタントサービスによるサポートを得て、校正品質の向上と製品品質の安定化を目指し、カラーマネジメントシステムを確立するための舵を切った。「CTP導入についてはほかの印刷会社よりも遅れを取っているので、後発だからこそ単にCTPを導入するだけではなく、時間を掛けてしっかりとしたカラーマネジメントシステムを確立させたいと思った。そして、ただプルーフを出力するだけでなく、本機校正と同じことができるよう、本紙で出力してそれを立体物に組み立てられるUVインクジェットプリンターと合わせた運用をしたかった」(河崎執行役員)

 そこで、同社が受けたアグフアのカラーマネジメントコンサルタントサービスでは、①大判インクジェットプルーフによる標準印刷品質の再現(印刷仕上がりを予測した校正サンプルの即時提供)、②2拠点(UVインクジェットプリンターは本社、CTPは工場に設置)間のリモートプルーフのCMS管理、③複数台印刷機の再現近似処理、④パッケージ製品サンプルの品質向上、⑤CMSによる特色近似色のプルーフ出力――の5つのステップをクリアしていった。

 

 まず、大判インクジェットプルーフで標準印刷品質を再現するために、カラーマッチングソフトで自社標準印刷チャートの色再現・調子再現をシミュレートしたインクジェットプルーフ出力を確立。調整ポイントとして、メーカー指定の測色カラーパッチによるICC自動調整に加え、CMYKバランスと代表的カラートーンを確認するチャートによって微調整を行い、標準印刷物の仕上がりを高精度にマッチングした。
 そして、2拠点間のリモートプルーフのCMS管理ついては、大判インクジェットプルーフの色再現は本社に設置するUVインクジェットプリンターだけでなく、同等の品質をCTP出力サイドの確認用プリンターでも出力可能とした。カラーマッチングソフトのカラーキャリブレーションによる安定性に加え、プリンター個体差を吸収する独自調整により、2台間の再現を一致。また、調整自体もVPNで遠隔操作が行え、CMS管理者が分散することなく統一した色管理が可能とした。

 トータルパッケージの日比社長と岩槻工場に設置した「アバロンN16]

トータルパッケージの日比社長と岩槻工場に設置した「アバロンN16]

 

 「アナプルナMv」で出力した物を立体成型するためにカッティングマシンで切り抜く

「アナプルナMv」で出力した物を立体成型するためにカッティングマシンで切り抜く

   

■ インクジェットプルーフでの近似特色再現を確立


 そして複数台印刷機の再現近似処理については、カラーマネジメントシステムによる標準印刷物プルーフが可能になったことで、印刷機個々の再現差をより詳細に確認できる環境を確立。同一のインキを使用した場合、印刷機の個体差は主に網点再現のバランス差によるものなので、この差をCTP出力RIP「アポジー7」の印刷機条件の出力カーブに登録し、印刷再現の個体差を小さくした。
 また、パッケージの事前サンプルはカッティングマシンで加工して、モックアップで実物大確認をするが、ここで付加価値と実物感を高めるために、本紙出力が可能な「アナプルナMv」を導入。これにカラーマッチングソフトも搭載して大判インクジェットプルーフと同様に印刷物仕上がりシミュレーションを施し、より製品仕上がりに近い色再現のモックアップ製作を実現させた。
 さらに、パッケージ製品は特色インキによる印刷が多いのでこれまではレイアウト・デザイン確認用の校正と色校正を分けて行う必要があったが、カラーマネジメントソフト導入とともにプロセス4色インキより色再現領域が広いインクジェット出力の利点を活かし、カラーマネジメントソフトに特色出力データを登録することでインクジェットプルーフでの近似特色再現を確立。日本国内で指定の多い「DIC Color Guide」と「Toyo Color Finder」の2000色を超えるデータを準備し、立ち上がりの早いユーザーニーズ対応を行なっている。

  「アナプルナMv」で出力し、立体成型したパッケージのサンプル

 「アナプルナMv」で出力し、立体成型したパッケージのサンプル

   

■ サンプル製作もプルーフ出力も迅速、安価、そして簡単に運用

 

 導入した「アナプルナMv」は、6色(C・M・Y・K・ライトC・ライトM)に加えてパッケージ印刷で多用される光沢ニス加工もすることができる、ロール給紙/フラットベッド双方に対応の印字幅160㌢㍍のモデル。UVインクジェットプリンターながら特別な換気装置も必要なく、運転音や臭いも気にならない程度なので、同社ではこの「アナプルナMv」を本社の事務所フロアに設置した。この「アナプルナMv」で校正出力やサンプル製作をするので、営業部門がいるところに設置をする必要があったからだ。そして、「アナプルナMv」の操作は専門の担当者ではなく、CADデザイナーが担当。特別な講習もオフセット印刷のような職人芸も必要とせず、スムーズに運用をしている。
 「アナプルナMv」導入の効果について河崎執行役員は、「今までは、プルーフ出力にせよ刷版出力にせよ外注に出していた。それがすべて社内ででき、データがあれば“アナプルナMv”で本紙出力し、カッティングマシンで加工して、すぐに立体物として確認できるようになり、スピード感や効率が飛躍的に上がった。コスト面でも、外注していたA倍判の刷版出力やプルーフ出力、本機校正にかかっていた費用から考えると大幅に減る。また、印刷立会いの頻度が減ったので、印刷機のスケジューリングが立てやすくなったことも大きなメリットだ」と高く評価をしている。

 

■ 極小ロットの最終製品の製作にも「アナプルナMv」をさらに活用

 

 同社では今後、「アナプルナMv」をプルーファーとして活用するだけにとどまらず、最終製品作りにも活用していく考えだ。「単に校正用途だけで使うならプルーファーを選んだかもしれないが、ある程度の投資になるので校正だけに用途を限定されないものとして“アナプルナMv”を選択した。UVインクジェットプリンターならば、最終製品の製作にも活用できる。これまで当社では扱ってこなかった小ロットのPOPやディスプレイなど、これまでとは違った新たなアプリケーションの製作に使いたい。また、紙の専門商社としての観点でも、単に紙を納めるだけでなく、“アナプルナMv”を使って紙に付加価値を与え、当社ならではの紙として納めるような提案方法も、将来的に視野に入れている」(河崎執行役員)と、さらなる活用法を展望している。