ユーザー訪問:神谷印刷印刷株式会社

2009.11.18 日本印刷新聞掲載

社会変化を敏感に掴み社内体制をアジャスト
環境配慮×高品質を達成する基盤を整備



昭和3年に創業し、80年を超える歴史を重ねてきた神谷印刷梶i本社・東京都豊島区高田1-6-24、神谷和宜社長)。その長い歴史では、時々によって変化する顧客ニーズや市場環境、社会情勢に合わせ、会社の体制を柔軟に変えてきた。そして今、地球規模で求められている環境配慮および、市場で日に日に増す高い品質要求に応えるため、同社はさらなる進化を目指した舵を切る。今年9月、アグフア社製のサーマルCTP「アバロンN8-20」と現像レスCTPプレート「アズーラTS」を導入し、製造現場の変貌に向けた基盤を整えた。

同社は、出版物の印刷を主要業務として創業。その経緯から、現在も書籍/コミック誌や社史編纂、自費出版をはじめとしたページ物印刷の分野を社業の軸に据え、その他にポスターやカレンダー、カタログなども広く手掛ける総合印刷会社として事業を展開している。従業員数は約40人で、プリプレスからプレスまでを社内生産できる体制を整えるとともに、各種デジタルメディアへの加工やホームページ制作も行う。印刷機は、菊全判の4色機、1/1色機、単色機の3台が稼働している。

神谷和宜社長

神谷和宜社長

同社では、刷版の約半分をフィルムからPS版製作するアナログ工程のものが占める。主業務の1つであるコミック誌では、版元側からデジタルデータ化することを望まれないケースがあることや、再版物の仕事が多いという背景があるからだ。そこで同社では、周囲の印刷会社が続々とCTPを設備する中も、予測されるCTP出力量と設備投資額の大きさとを踏まえ、導入を見送ってきた。その間、CTP出力については全て協力会社で行っていた。

 

そのような中で、加速度的に環境配慮への関心が大きくなっている社会情勢の変化がある。同社でもその変化を敏感に捉え、「KEPS(Kamiya Eco-Print Solution)」という新システムのコンセプトを立て、環境配慮への取り組みを開始。

この「KEPS」は、アナログ処理主体からデジタル対応に移行し、地球環境と製造現場に優しいプロセスを構築するとともに、品質および生産性向上を目的としたもの。「KEPS」をコンセプトとした新ワークフローでは、▽オフセット印刷における刷版製作上の課題である現像廃液を無くすことによる、環境配慮と品質安定、▽最新ワークフローシステムにより、データ処理の安全性向上、そして高精細印刷による品質向上――を図り、顧客への貢献力アップと明確な差別化を目指す。「KEPS」を打ち出した頃には、CTPシステムが数年前よりも導入しやすい価格になっており、費用対効果にも見合うという判断もあった。そこで、これを具現化するために同社が導入したのが、四六全判サーマルCTP「アバロンN8-20」と現像レスCTPプレート「アズーラTS」だった。

中泉尋臣部長

中泉尋臣部長

 

市場動向を察知して環境配慮型印刷へ針路を定めたが、それに加えて従来からの同社の特徴である、印刷を工芸品と位置付ける品質への追求をさらに突き詰め、高精細印刷への展開も始めている。アグフア社の高精細XMスクリーニング「スブリマ」を採用し、240線の高精細印刷を同社では標準印刷としていくことを定めた。「市場では環境配慮型印刷だけではなく、高品質印刷を志向する傾向も見られるので、240線での高精細印刷を常に提供できることを前面に出した営業をしていく」と、同社管理部の中泉尋臣部長は、その狙いを語る。

これらの取り組みは、営業面でのメリットも大きいが、製造面でも大幅な効率化が図られている。製造現場からは、「現像レスCTPプレートに変更したことで、廃液処理をする必要が無くなった上、現像液補充の労力や時間、気配りも不要になり、作業がとても楽になった。また、自動現像機の清掃時は出力が半日ストップしていたが、それも無くなった。検版は目視でしているが、それもこれまでと同様にできる」という感想の声があるという。さらに、同社ではCTPと同時に導入したPDFワークフローRIPの「アポジー」を採用。「アポジー」が持つ、既存データ処理環境への融合性、データ上の不備を一括自動処理できる操作性と効率性、そしてWeb to Printへの展開も可能な今後への発展性に、同社では高い評価をしている。


 世界的に温室効果ガスの1つであるCO2の排出量削減に注目が集まっている。印刷会社としてできる最大のCO2排出量削減法は用紙の使用量を抑えることであり、それは即ち損紙を削減することだ。そのためには、印刷での迅速な色合わせができる環境が必須で、きちんとしたカラーマネジメントシステムを構築することが重要なポイントとなる。同社ではCTP導入前からカラーマッチングに取り組んでいるが、今回のCTP導入によるデジタル化で、よりいっそう管理がしやすくなった上、現像という不安定要素も無くなったことによる品質安定が、さらなる損紙削減に効果を発揮している。

アバロンN8-20

省スペース設計の「アバロンN8-20」を
コンパクトな形で設置している


 同社では「KEPS」に基づいた新ワークフローへの移行により、刷版の内製化による瞬発性、高精細印刷による高品質化、現像レスCTPプレートによる環境配慮や廃液処理コスト低減、品質安定性、作業の効率化をはじめとしたメリットの創出を目指す。さらに、これらのメリットを営業成果に結び付けるために、環境保護印刷推進協議会(=E3PA)が認証するクリオネマークの取得を視野に入れている。「クリオネマークの認証を取得し次第、環境を1つのテーマにして、当社のホームページやパンフレット、名刺などを一新する。既存の得意先に対しては、環境対応力とともに高品質印刷をアピールする。また協力会社に対しても、環境意識を持ってもらうように働き掛け、当社の仕事をそのような手法でやってもらえるような形にしたい。そして新規顧客に対しても、我々のこのような取り組みが、国や世界が力を注いでいる取り組みに倣ったもので、当社に発注することで環境配慮に貢献できることを訴えていく」と神谷社長は、同社の今後の展望を表している。

日本印刷新聞転載